インフルエンザ2018 ~流行状況と対策~
あたたかい気温が続いた2018年冬の始まりでしたが、12月に入ってぐんっと本格的な寒さが到来。こんなときこそ、体調管理に気を付けたいものです。さて、感染症の中で特に注意したいのはやはり「インフルエンザ」。インフルエンザが恐ろしいのは、 ・非常に高い感染力・ときに重い症状(異常行動などを含む)・深刻な合併症を引き起こすリスク といった特徴があるから。そこで、今回は、2018年のインフルエンザの傾向や流行状況、予防接種などについてお伝えしていきます。 インフルエンザの流行状況は? 国立感染研究所の『感染症発生動向調査 』による2018年第48週(11月26日~12月2日)、第49週(12月3日~12月9日)、第50週(12月10日~12月16日)を比較してみると、一医療機関当たりのインフルエンザ患者数は、0.93人(第48週)→1.70人(第49週)→3.35(第50週)と急増しており、日本は全国的にインフルエンザ流行期に突入したと言えるでしょう。以下の表は、インフルエンザの流行度合の示しています。その基準は、医療機関1件当たりの1週間の患者数が、 ・ 1人以上 … 流行開始・10人以上…「注意報」レベル・30人以上…「警報」レベル となっています。皆さんの地域ではいかがでしょうか。 しかし、その程度は都道府県ごとで異なりますので、今後もその推移を見守っていく必要があります。各地域の最新の流行状況はこちらをご参照ください。 国立感染症研究所 インフルエンザ流行レベルマップ 今年のインフルエンザの特徴 インフルエンザの原因となるウイルスは、A型、B型、C型といった3種類に大きく分類されますが、ヒトで問題となるのはA型とB型です。さらに細かく分類すると、膜表面の抗原性の組合せによって、 A型:144通り(HA16種類×NA9種類)B型:1通り(HA1種類×NA1種類) といった亜型が存在し得ます。現在は、A型ではH1亜型とH3亜型の2種類が流行しています。2018年10月29日~12月2日時点では、下記の亜型が多く検出されています。 1位:AH1pdm09(2009年に流行したA型)2位:AH3亜型(香港型と呼ばれるA型)3位:B型 これらに対するワクチンの中身は、毎年、南半球での流行状況や過去のデータを元に当年流行する亜型を予測して決定されます。今シーズンの予測は的中していたのでしょうか。 今シーズンの予防接種の効果は期待できるか 今年のインフルエンザワクチンの中身は、下記の4種類。 (1)A/Singapore(シンガポール)/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09(2)A/Singapore(シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)(H3N2)(3)B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)(4)B/Maryland(メリーランド)/15/2016(NYMC BX-69A)(ビクトリア系統) これらのワクチンは、48週目までに多く検出された型に、対応できていたのでしょうか。1位~3位のウイルスに対する効果を調べてみると、以下の結果に。 1位の「AH1pdm09」に対するワクチン…(1) 2位の「AH3亜型」に対するワクチン…(2) 3位の「B型」に対するワクチン…(3)(4) きちんと対応できていたことが分かります、ただし、予防接種をしていても万全ではありません。A型は次々と変異を繰り返す性質があるため、抗体をつけたとしても、その変異に追いつけず発病してしまう可能性があります。とはいえ、予防接種に意味がないわけではありません。日本臨床内科医会が毎年行っている調査では、予防接種を受けた人の方が発病しにくいという結果が出ています。また、厚生労働省 の発表では、 *65歳以上の高齢者がワクチンを接種した場合、発病を約34~55%予防し、死亡を82%予防*6歳未満の幼児がワクチンを接種した場合、発病を約60%予防 という研究結果が出たとされています。特にB型は突然変異をせず、抗体がよく働き、発病しても重症化を防ぐことができるので、予防接種の効果は高いといえます。また、予防接種を受ける時期は、11月~12月上旬までが推奨されている理由は、 日本のインフルエンザが12月~3月に流行し、予防接種後、効果が出るまでに「約2~3週間」、効果の持続が「約5ヵ月間」と考えられているため です。流行時期から逆算しても、今からでも遅くはありません。1月上旬までに予防接種をすれば、流行最大時に間に合う計算になります。また、一度インフルエンザにかかっても、別の型に再感染する可能性も。今からでも予防接種を受けておくことをオススメします。 予防接種以外の予防法は 予防接種以外にも、下記のことに気を付けましょう。 ・人込みを避ける・外出時にマスクを着用する・加湿器などを使用して、湿度を50~60%に保つ・十分な睡眠とバランスのよい食事を心がける・うがい、手洗いをよく行う インフルエンザの感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」と言われていますが、一部では「飛沫核感染(空気感染)」も起こっているようです。飛沫感染は、主に、患者の咳やくしゃみと一緒に放出されたウイルスを、のどや鼻から吸い込むことで感染します。そのため、流行時は人込みを避け、マスクを着用することが大切です。また、乾燥すると鼻や喉の防御機能が低下するため加湿器などで湿度を50~60%に保つことも大切。マスクは口元の湿度を保つ上でも効果的といえそうです。接触感染は、患者から飛び散ったウイルスが、物などを介して口から取り込まれることで、うがいや手洗いは基本中の基本。そして、どんな感染症でも基本となるのは、十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけ、日頃から免疫力を高めておくこと。免疫力を高める栄養源としては、 ・免疫の働きを助ける善玉菌を多く含む食品・善玉菌の餌となる食物繊維・免疫細胞の素となるたんぱく質 といったものがオススメです。 インフルエンザにかかってしまったら インフルエンザにかかると、急速に38℃以上の高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛といった症状が現れます。この時期は、発熱したらまずインフルエンザを疑い、発熱後12時間以上、48時間以内に医療機関で受診 するようにしましょう(※発熱後12時間以上経過しなければ、インフルエンザの検査で的確な結果が得られません。また、発熱後48時間以内に薬を服用した方が、より効果が期待できるとされています)。インフルエンザは、健康な若い人であれば自然治癒するものですが、早期回復、重症化予防、感染拡大の防止のためには、抗インフルエンザ薬の服用が望ましいとされています。しかし、代表的な薬である「タミフル」による異常行動のニュースをご存じのかたは、不安を覚える方もいるかもしれません。実際に、最近までタミフルは、10代への使用が制限されていました。しかし、2018年5月には、その使用制限が解除されています。その理由は、 薬の服用の有無や、薬の種類に関わらず、インフルエンザ感染時は、異常行動を起こす可能性がある ためだとされています。いずれにせよ、インフルエンザ患者の看病時は容体を注意深く観察する必要があるということです。既に、インフルエンザの流行は各地で開始しています。しっかりと予防対策を行っていきましょう。 (監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 参照URL NIID 国立感染症研究所 インフルエンザワクチン株IDSC 国立感染症研究所 感染症情報センター厚生労働省 インフルエンザQ&Aインフルエンザ過去10年間との比較グラフインフルエンザ流行レベルマップインフルエンザ罹患に伴う異常行動研究
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