ご存じでしたか?「細菌」と「ウイルス」の違い
全国各自治体で、いよいよ5月から一般に向けたワクチン接種が開始されました。そして、アストラゼネカ製ワクチン、モデルな製ワクチンが承認、24日には国内4例目となるジョンソン・エンド・ジョンソン社からも承認申請がなされました。一気に動き出した感のあるワクチン接種。このことをきっかけに、コロナ禍が少しずつ収束していくことを願うばかりです。 さて、過去に例を見ないくらい「ウイルス」という単語が飛び交っている昨今。読者の皆さんのなかには、「ウイルス」と「ウィルス」、どちらが正しいんだろう?と疑問に思ったことのあるかたはおられませんか?Google検索のヒット数(2021年5月24日現在)を比較してみると、 ウイルス:534,000,000件 ウィルス:134,000,000件 と、大きな差異。とはいえ、5人に1人は「ウィルス」と検索しているわけですね。巷の報道をみていても「ウイルス」と表記している場合が多いようです。じつは、そこには明確な答えはありません。調べてみると、2012年に開催された「第1356回放送用語委員会」開催の記事を見つけました。その中の「カタカナ表記の基本方針」の中に、原音とは異なる慣用が熟しているものは、慣用の形を尊重するとありました。言われてみれば、本来の英語のスペルは「virus」。音を尊重し「ウイルス」と表記するぞ、と決めたのだそうです。それにしても「異なる慣用が熟している」という表現が、何とも言えず日本らしいハイコンテクスト文化の香りを感じますね。本稿の最後に参照URLがありますので、興味のあるかたは覗いてみてください。4ページ目の一覧表に「ウインク」「ウインナー」などと並んで、NHK表記が書かれています。さて、ここからが本題。本稿で今回採り上げるのは、 「細菌」と「ウイルス」の違い について。漠然と「別物なんだろうな」という感触のかたは多いと思いますが、実際その違いは何?と聞かれると、答えに窮するかたも多いのでは。今回は、そんな分かっているようで、実はそうでもない「細菌」「ウイルス」について、理解を深めていきたいと思います。 「細菌」と「ウイルス」の違い さて、「細菌」と「ウイルス」には、いったいどのような違いがあるのでしょうか。その違いを明らかにするためには、以下の3つの観点から見ていくのが良さそうです。 * 大きさの違い * 増え方の違い * 治療・予防策の違い「生物」かどうかという論点も重要ですが、「ウイルスは、生物ではないが微生物ではある」など余計に混乱する恐れがありますので、本稿では割愛させていただいております。 ①「細菌」と「ウイルス」では、大きさが違う 細菌のウイルスの差( image by Ali Zifan ) 「細菌」と「ウイルス」の違いについて、もっとも分かりやすいのは、その大きさ。「細菌」は、インフルエンザやノロウイルスなどの代表的な「ウイルス」との平均値を比較すると、約40倍~100倍の大きさがあります。具体的なウイルス名を例示して比較した表がこちら。 ヒトの肉眼は200μm(マイクロメートル)までしか視界に捉えることはできませんが、「細菌」の大きさは、その1/200~1/40。肉眼ではまるで確認することはできません。「細菌」は、小学校の授業でも取り扱う「光学顕微鏡」でその姿を確認することができます。一方で、表の中で紹介しているウイルスは、肉眼で見える限界値と比較すると、1/9,000~1/2,000という大きさ(一般的には、nm(ナノメートル)という単位が用いられますが、比較しやすいようにμmで表記しています)。観察するためには、大学や研究施設などで使われる「電子顕微鏡」が活躍します。 光学顕微鏡(左)と電子顕微鏡(右)の例 ②「細菌」と「ウイルス」では、増え方が違う ■ 細菌の増え方 細菌は、「遺伝子」と「遺伝子から、増殖に必要な道具(タンパク質=酵素)を作る仕組み」を持っています。そのため、糖などの栄養源と水のある適切な環境下では、自ら細胞分裂を繰り返し、2倍2倍と増殖していきます。細菌の中には、ヒトの体の中に侵入して病気を起こす有害な細菌もいる一方、体内や皮膚の表面にも無数の細菌が存在、良好な環境を保つために重要な働きをするものも。例えば、美肌菌と呼ばれる細菌群。皮膚の表面で、*肌のpH値を弱酸性に保ってくれる*保湿成分を排出してくれる*悪玉菌の繁殖を抑える成分を排出するなど、肌を良好な状態にキープしてくれる役割があります。また、発酵食品などでよく見かける「乳酸菌」や「ビフィズス菌」は、腸内で、消化吸収の補助や免疫刺激など、健康維持や老化防止などに良い影響がある細菌です。 ■ ウイルスの増え方 ウイルスは、栄養源や水があっても、単独で生存するために必要な道具を備えていないので、他の生物の体内に入り込み、細胞から不足している機能を補ってもらう必要があります。体内に侵入したウイルスは、細胞の中に自分のコピーを作らせ、細胞が破裂してたくさんのウイルスが飛び出し、さらに他の細胞に入り込んでいきます。こうしてウイルスは増殖していきます。 ここでの両者の重要な違いは、「細菌」は自ら生存・増殖することができるが、「ウイルス」は単体では生存・増殖できないという点です。 ③細菌とウイルスでは、治療や予防の仕方が違う ■ 細菌による感染症の治療方法は 細菌による感染症には、実に多くの種類があります。感染症の種類によって原因菌も異なり、代表的なものでは、発症した場所が肺であれば肺炎(多くは、肺炎球菌に起因)、膀胱なら膀胱炎(多くは、大腸菌に起因)など。体の不調を感じたら、迷わず医師に相談しましょう。体のどこに問題が起きているのかを特定、そして、原因菌が何なのかを突き止め、治療方針を検討してくれるはずです。もともとの体の状態によっても、どのような菌が悪さをするかが異なってきます。免疫力が低下した状態では、日頃は悪さをしない細菌が問題を引き起こし、感染症を発症することもあり、注意が必要です(「日和見感染」と呼ばれます)。治療には、多くの場合、抗菌薬が処方されます。その種類や量・期間は、感染症の場所と原因菌の組み合わせで変わります。抗菌薬が処方されたときには、正しく服用し、決められた量と回数を決められた日数で飲みきりましょう。症状がよくなったからといって途中でやめてしまうと、感染症が治りきらず、治るまでに余計に時間がかかってしまうこともあります。 ■ ウイルスによる感染症の治療方法は ウイルスは、抗生物質の効き目がありません。そのため、基本的な治療法は、熱を下げる、酸素を投与するなどの対症療法を行いながら、自分自身の免疫力によって、体内のウイルスが駆逐されていくのを待つことになります。インフルエンザウイルスなど、有効な抗ウイルス剤(ウイルスの増殖を抑制する薬)もありますが、決して多くはありません。抗ウイルス薬の開発が困難である理由のひとつは、ウイルスは、タンパク質の殻の中に遺伝子があるだけの非常に単純な構造なので、医薬がターゲットにする「弱点」が少ないこと。また、生物の細胞内で増殖するため、生物に影響を与えず、ウイルスだけを駆逐するハードルが極めて高いと言われています。 ■ それぞれの共通点 細菌とウイルスとで共通していることがあります。それは、予防法として一部に免疫をつけることで予防できる疾患があることです。すなわち「ワクチン」。ワクチンで予防できる疾患は、ぜひ、ワクチンで予防したいものです。今回、新型コロナウイルスのために海外で開発されたワクチンが、輸入されて使用され始めているのはご存知と思いますが、世界中の科学者が叡智を集めてワクチン技術を推し進めています。日本は一歩出遅れましたが、負けじと国産ワクチンが開発されています。日本国内でも、接種者が増える日が待ち遠しいですね。 ~ まめ知識 ~風邪は細菌とウイルスどちらの仕業? 風邪は、上気道(鼻やのど)が微生物に感染することによって起こります。原因微生物の約90%はウイルスが占め、残りの約10%は細菌やマイコプラズマ、クラミジアなどウイルス以外による感染だと言われ、その原因菌の種類はウイルスだけでも200種類以上とも言われます。「風邪に特効薬なし」と言われるのは、どのウイルスが原因で起こったのかを特定することが困難だから。 まとめ 今回のDELMAGAでは、「細菌」と「ウイルス」の違いについてレポートしてきました。おさらいとして、重要なポイント、以下の表にまとめましたので、ご参照ください。 クリックで画像拡大できます 「細菌」も「ウイルス」も、やはり日常生活で感染しないように心掛けることが、とても大切です。最後に、基本的な予防策について。 「細菌」や「ウイルス」の感染から身を守るため予防策 感染症は、原因となる病原体や感染経路によって予防対策が異なります。日頃からできる予防策を徹底しましょう。 常に清潔な環境を保つこと*こまめに手洗いしましょう。手指の清潔さは感染症予防にもっとも効果的です。*こまめな換気や湿度を調整しましょう。ウイルスは低温、乾燥状態を好みます。ウイルスの生息しにくい環境作りを。免疫力を低下させない*栄養バランスの良い食事を摂りましょう。*充分な睡眠をとり、規則正しい生活をしましょう。*適度な運動をしましょう。*ストレスをなるべく溜めないようにしましょう。食中毒の予防*新鮮な食材を選び、常温のものはすぐに食べるか、保管するときはすぐに冷蔵へ。*肉、レバーなどの食品は十分に加熱しましょう。*焼肉など、調理用の箸と食事で使う箸は使い分けましょう。*調理や食事の前、トイレ後、おむつを交換時などには必ず手洗いましょう。 そのほか、予防接種も非常に有効な手段ですし、抗菌・抗ウイルス製品(※)も活躍してくれます。必要に応じて検討してみてください。 ※抗菌製品が、必ずしも抗ウイルス製品であるとは限りません。注意書きや効能をよく確かめるようにしてください。一例として、当社の抗菌・抗ウイルス製品「delfino(デルフィーノ)」は、ターゲットにしたい悪さをする細菌やウイルス、それぞれの検体について、第三者の検査機関でその効果検証を行なっています。 (監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 「delfino施設まるごと抗菌」とは 感染症対策製品「delfino(デルフィーノ)」は、「感染ゼロをめざして」というコンセプトのもと、光触媒(酸化チタン)、抗菌触媒(銀)、三元触媒(プラチナ)などの触媒を組み合わせることで、それぞれの触媒反応が持つ効果を相乗的に発揮させながら、それぞれの弱点を補うという発想の抗ウイルス・抗菌・防臭剤です。そのデルフィーノを、専用噴霧器によってμ(ミクロン)単位の粒子で噴霧、密閉空間に充満させていくことで、壁面だけでなく、カウンター、チェア、デスク、キャビネットなどのあらゆるものを抗ウイルス・抗菌コーティングして、施設内での感染リスクを軽減します。お問い合わせは以下のリンクから! お問い合わせ 参照URL 新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(厚生労働省)感染症とは(AMR Clinical Reference Center)外来語の表記・発音について(放送用語委員会/NHK)
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