冬の乾燥肌対策の秘訣は「美肌菌」!感染症予防にも!?
2018年も、残すところあと1か月と少し。乾燥しがちな冬がすぐそこまで迫っています。冬と言えば、お肌のカサカサが気になる時期ですね。放っておくと、ひび割れたりすることも。ところで、空気が乾燥するとお肌がカサカサになるのはなんでしょうか。じつは、それには、 美肌菌 と呼ばれる細菌が関係していたのです。なんだかとってもよい響きです「美肌菌」。お肌の乾燥は肌荒れを引き起こすだけではなく、なんと感染症の原因にもなるのだそうです。そこで、今回は、 「美肌菌」の正体と肌荒れのメカニズム 肌荒れが引き起こす感染症と対策 についてレポートしていきたいと思います。 美肌菌とは さて、美肌菌とは、いったい何なのでしょうか。その正体はこれ。 表皮ブドウ球菌 という「常在菌」のひとつ。じつは、人間の身体にはさまざまな細菌が寄生しています。それらの細菌で、病原体を示さないものを総称して「常在菌」と呼んでいます。常在菌の種類やその数は、人により差異がありますが、その数は約100兆個。重さに換算すると約1~2kgにもなるんだとか。人間の身体の全細胞は約37兆個という説が有力とされているので、それを大きく上回る「菌」が身体に寄生しているということになります。一般的に、「菌」と言うと、「汚い」とか「病気の原因」などを連想しがち。しかし、常在菌は病気の原因になるどころか、 病原菌から身体を守る 働きを担ってくれているのです。常在菌は、種類により好む部位が異なり、皮膚にも、その環境を好む特定の菌種がバランスを保ちながら共存しています。そのひとつが、「美肌菌」の正体である「表皮ブドウ球菌」。いったい、どんな菌なのでしょうか。他の代表的なものと一緒にご紹介します。 皮膚の主な常在菌 皮膚の常在菌は、約200種類あるといわれています。その中で代表的な細菌は、下記の2種類。 ●表皮ブドウ球菌「美肌菌」の正体。皮膚の表面や毛穴に存在します。汗や皮脂を餌に、グリセリン(お肌に潤いを与える働き)、脂肪酸(お肌を弱酸性に保つ働き)を産生。「脂肪酸」は「抗菌ペプチド」を作り出し、肌荒れやアトピー性皮膚炎の原因になる「黄色ブドウ球菌」の増殖を抑止します。 ●プロピオニバクテリウム アクネス通称「アクネ菌」。酸素に触れる場所では増殖できず、毛穴や皮脂腺に存在。皮脂を餌に、プロピオン酸、脂肪酸といった物質を産生し、お肌を弱酸性に保つことで病原性のある細菌の増殖を抑止。これらの常在菌の働きにより、お肌が潤いを保ち、病原菌が増殖しにくい環境が作られているのです。 お肌の乾燥が肌荒れを引き起こすメカニズム ところで、なぜお肌が乾燥すると、肌荒れが起きやすくなるのでしょうか。それは、 美肌菌の正体の「表皮ブドウ球菌」が乾燥に弱いから なのです。お肌が乾燥すると、「表皮ブドウ球菌」が住みにくい環境となり、その数が減少。すると、お肌に潤いを与える「グリセリン」や、弱酸性に保つ「脂肪酸」の産生量も減少するというわけ。結果、お肌がアルカリ性に傾いてしまい、肌荒れやアトピー性皮膚炎の原因になる「黄色ブドウ球菌」が増殖することに。「黄色ブドウ球菌」は健康な成人のうち、約20~30%が保菌していると言われますが、通常は一過性の寄生で、症状は出ることはありません。しかし、「ひび」や「あかぎれ」などの傷口で増えやすく、手が荒れている人の方が、荒れていない人よりも「黄色ブドウ球菌」の検出数が多いという結果が複数報告されています。つまり、「黄色ブドウ球菌」が少数であるうちは無害でも、乾燥で「表皮ブドウ球菌」が減少すると肌荒れがおこり、そこで「黄色ブドウ球菌」が増殖すると感染症へと発展するという悪循環が起こるのです。 「黄色ブドウ球菌」による感染症 「黄色ブドウ球菌」が原因となる感染症は、こちら。 <皮膚感染症>●毛包(もうほう)炎 体毛の根元にうみがたまり、吹き出物ができる症状で、わずかな痛みを伴う。黄色ブドウ球菌による皮膚感染症では最も軽度。●膿痂疹(のうかしん) 「とびひ」と呼ばれ、黄色いかさぶたを伴うただれや黄色い液体が詰まった水泡ができる。わずかな痛みがあり、かゆみを伴うため、患部を強くかいてしまうことで感染が広がる。小児間での感染がよく見られる。●膿瘍(のうよう) 皮膚の下にできる膿のかたまり。限られた範囲に生じる。熱を持ち、痛みを伴う。●蜂窩織炎(ほうかしきえん) 皮膚の下にできる膿のかたまり。ズキズキとうずくように痛み、皮膚が赤くなる。患部が拡大する特徴がある。 <食中毒>●黄色ブドウ球菌食中毒 調理する人の手から菌が食品に移り、食品中で菌が増殖する際に産生する毒素を食品と共に摂取することで起こる食中毒。毒素は100度で30分加熱しても消滅しない。突然の吐き気、嘔吐、腹痛、下痢を引き起こす。 その他、「肺炎」「髄膜炎」「敗血症」など重篤な感染症の原因になる場合があります。 「美肌菌」を減らさない対策を! お肌の潤いを保つためにも、感染症を防ぐためにも、肌荒れを放置せず、きちんとケアすることが大切です。日頃、以下のことを意識してみてください。 ●水を使った後は、すぐに手の水分をふきとる 皮膚を濡れたままにすると、水分が蒸発するときに皮膚の水分も一緒に蒸発し、お肌が乾燥します。濡れたら、すぐにふきとりましょう。●保湿する ハンドクリームや美容液で、こまめに保湿しましょう。ただし、クリームやオイルなど油分が多いものは毛穴を詰まらせ、ニキビの原因になるので要注意。●長時間の入浴、頻回の洗浄・洗顔を避ける 美肌菌の「表皮ブドウ球菌」は角質層に存在するため、角質を落としすぎる行為は避けましょう。 皮膚は、外部刺激と最前線で戦ってくれる重要な免疫組織。皮膚の状態を健康に保つことは、身体全体の健康にもつながります。お肌の日頃の労をねぎらうように、優しく丁寧にお肌のお手入れしてみませんか? (監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 参照URL 腸内細菌叢の基礎(東京大学大学院 農学生命科学研究獣医学)千里ライフサイエンス振興財団セミナー資料目に見えないヒト常在菌叢のネットワークをのぞく(宇宙航空研究開発機構 太田 敏子)顔の常在菌を大切にしよう(持田ヘルスケア株式会社)皮膚の常在菌について(東京医療保健大学)手荒れと手指衛生の科学(花王株式会社 化学品研究所)手荒れと院内感染(丸石製薬株式会社)ひび・あかぎれの原因・仕組みを解説(ロート製薬株式会社)
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