「抗菌」「除菌」「殺菌」「消毒」の違いや意味
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって、菌・ウイルス対策用グッズは日々の生活で欠かせないものとなりました。自分や家族の健康を保つために、いつも身の回りは清潔にしておきたいもの。衛生用品を求めて、ドラッグストアの店頭や、ネット検索などで菌・ウイルス対策製品を探してみると、改めて市場には多くの製品が溢れていることに気付かされます。また、そのパッケージをじっくり見てみると、「抗菌」「除菌」「殺菌」「消毒」など、様々な種類があるようです。どれも環境衛生を保つために効果的であるような、ポジティブな印象を受ける表現ばかり。しかし、 どれを選ぶのが正解なのか分かりにくい! そう思ってはいませんか…?そこで、今回は、それぞれの用語の意味を分かり易く解説し、スムーズに製品選びいただける資料を目指します。ぜひ最後までお付き合いください。 「抗菌、除菌、殺菌、消毒」の違いを整理 菌・ウイルス対策製品に使用される主なキーワード あらためて、関連キーワードを挙げてみます。ネット検索やドラッグストアの店頭に並んだ菌・ウイルス対策製品のパッケージには、「抗菌」「除菌」「殺菌」「消毒」を使用しているものが多数。さらに、ネット検索を続けていくと、「滅菌」「静菌」という耳慣れない表現も登場します。他にも種類がありそうですが、沼にはまってしまいそうなので(汗)、今回はこの6つを採り上げてみることにします。 まず、言語の観点から6つのキーワードを考察してみると、全ての用語は、熟語の分類上では「動詞の後ろに目的語をおく」というパターン。「菌』を●●する(または、「毒」を●●する)「菌」(または「毒」)に対してどのように働きかけるのか?について、表現する文字が一文字目に来ています。ひょっとすると、その程度によって用語が使い分けられているのかもしれませんね。さらに理解を深めるべく、掘り下げていきたいと思います! 「抗菌」「除菌」「殺菌」「消毒」の使い分け 個別の用語について丁寧に調査を進めていくと、どうやら6つのキーワードは、「菌に対してどのように働きかけるのか」だけではない、別のルールで2つに分類できるということが分かりました。その分類するポイントとは、製品によって使える用語が異なる ということです。「抗菌」「除菌」「殺菌」「消毒」のうち、 「殺菌」「消毒」は、薬機法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称)によって効果がみとめられた医薬品または医薬部外品にしか使用できません。(※「殺菌」「消毒」の最上級ともいえる表現「滅菌」も同様) 医薬品、医薬部外品は、以下のように定義されています。 *「医薬品」とは…病気の治療を目的とした薬。配合されている有効成分の効果が、厚生労働省により認められたもの。*「医薬部外品」とは…厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が一定濃度で配合された製品。人体への影響が比較的緩やかで、販売業者に情報提供努力義務を課さず、一般小売店でも販売可能な製品群。 「医薬品」と比べて馴染みの薄い「医薬部外品」には、健胃薬(いわゆる胃腸薬の類)、コンタクトレンズ装着液、薬用せっけんなどが該当します。意外なところでは、パーマ液なども含まれています。このように「殺菌」「消毒」「滅菌」については、「菌を●●する」の”●●”の部分が断定的に表現されているので、健康被害に抑止するために医療に関わる法律で規制しているというわけですね。 一方で、菌を減らす・増殖を抑制する意味の「抗菌」「除菌」については薬機法による規制がありません。製品には、ウェットティッシュや洗剤などの雑貨品に多く使われており、その基準については、直接的な法規制がない代わりに、それぞれの製品の業界団体が表示の自主基準を定めています。仮に「除菌」製品に「殺菌」「消毒」の効果があった場合でも、製品分類上で「除菌」と表現されることになります。ここまでを整理すると、 *「殺菌」「消毒」「滅菌」は、菌を殺す意味を持ち、「医薬品」「医薬部外品」にのみ使用可*「抗菌」「除菌」は、菌を減らす、または増殖を抑制する意味で、それ以外の製品に使用 となります。次に、「抗菌」「除菌」「殺菌」「消毒」など、それぞれの用語の意味と、その違いを解説していきます。 「抗菌」とは 画像引用:SIAA Webサイトより 当社製品「delfino(デルフィーノ)」も、この「抗菌」カテゴリに分類されます。delfinoも認定を受けているSIAA(抗菌製品技術協議会)は、もっとも知られている業界団体のひとつですが、「抗菌」について、以下のとおり定義しています。 製品の表面上における細菌の増殖を抑制すること 経済産業省が作成した「抗菌加工製品ガイドラン」では、「抗菌加工した製品の表面上の細菌の繁殖を抑制する」とされています。一時的に「菌」を除去する他のカテゴリとは一線を画し、細菌の増殖を一定期間抑えることによって、菌が繁殖しやすい環境に先手を打って、菌が住みにくい環境を作ります。抗菌製品には、マスク、ハンカチや下着類、事務用品、玩具、キッチンやサニタリー製品(浴室、トイレ等)など豊富な種類があります。「抗菌」の歴史を紐解いてみると… 「抗菌」製品が近年最も注目を集めるようになったのは、1990年代の腸管出血性大腸菌O157の流行がきっかけであるとされます。学校給食などに起因して発生したO157の症状は重く、残念ながら命を落としてしまった児童も…。その防衛策のひとつとして注目されたのが「抗菌」製品でした。当時、市場には「抗菌●●」と銘打った製品が一気に出回り、「抗菌」という概念は一気に市民権を得ました。その一方で、「抗菌」製品が法律によって規制されないことが一部の業者に悪用されることになり、粗悪な製品もまた、数多く市場に出回ることになりました。そんな状況を重く見た大手建材メーカーや素材メーカーが立ち上がり、業界団体を発足。以来、各団体は市場に正しい「抗菌」製品が出回るように監視したり、基準を設けるなどの取組みを継続、現在のように多くの優秀な「抗菌」製品が流通する土壌が作られたというわけです。 抗菌についての整理はこちら。 「抗菌」とは、菌を長時間増やさない様にすることを言います。菌を一時的に死滅・除去する殺菌・除菌とは区別されます。 「除菌」とは 除菌とは、「菌を取り除いて減らすこと」を指します。 「除菌」製品は、コロナ禍によって再注目され、市場に流通する製品の幅も量も、一気に拡大した感がありますね。アルコールを使用したものには、特に人気が集まっている印象です。その製品群には、アルコールスプレーやジェル、ウェットティッシュ、食器用・洗濯用洗剤などがあります。菌を除去するという観点から、手洗いも除菌行為と言えそうですね。念のため、専門機関・団体による定義を調べてみると… *食品衛生法による定義…ろ過等により、原水等に由来して当該食品中に存在し、かつ、発育し得る微生物を除去すること* 洗剤・石けん公正取引協議会…物理的、化学的又は生物学的作用などにより、対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を有効数減少させることをいう このように、非常に難解な言い回しや、アカデミックな表現が使用されていました…。さておき、分かり易く「除菌」についてまとめると、 医薬品・医薬部外品以外で、病原体となりうる菌を狙って除去しようすること という理解で丁度良いと思います。なお、減少させる菌やウイルスの種類や、量についての定めはありません。 「殺菌」とは 画像引用:「Clean Lav」ボーイング社Webサイトより 「殺菌」とは、文字通り特定の菌を殺すこと。細菌などの微生物を死滅させること。 市販薬や薬用せっけん等で使用されているのを見かける「殺菌」。医薬品などの製造、表示、広告などを定めた「薬機法」の対象である医薬品・医薬部外品のみに使用できます。菌の種類や数は問わず、数が減れば殺菌と表現することができるため、その効果・範囲については製品によって大きな差異があります。業務用の「殺菌」方法には、 *「塩素殺菌」 …塩素を使用する *「オゾン殺菌」…オゾンにより発生する酸素で菌を溶かす *「紫外線殺菌」…紫外線を照射する の3つの方法があり、目的や範囲によって選定されます。「殺菌」についての整理は、 医薬品・医薬部外品にのみ使用可能で、特定の菌を死滅させること ということになります。 「消毒」とは 「消毒」とは、菌やウイルスを無毒化することです。 「薬機法」に基づき、厚生労働大臣が品質・有効性・安全性を確認した「医薬品・医薬部外品」の製品にのみ記されている用語です。この「消毒」という用語が親しみ深いかたも多いのではないでしょうか。幼少期に転んで擦り傷を作ったときに、家族や周囲の大人が「『消毒』しなきゃ」と言って薬剤を塗布し、絆創膏を貼ってくれたり…そんな思い出が蘇る用語かもしれません。「消毒」の方法には以下の2つがあり、環境や用途によってどちらかを選択、または双方を同時に行なうなどします。 *物理的方法…煮沸、蒸気、紫外線などによる方法*化学的方法…アルコール類や、塩素系の成分を含んだ薬品などによる方法 「消毒」について整理すると、 医薬品・医薬部外品にのみ使用可能で、病原体のある細菌のみを無毒化すること となります。なお、気になる「消毒」と「殺菌」の違いは、以下のように整理することができます。 *「消毒」…病原性のある細菌(病原菌)のみをターゲットとして、感染症を防げるレベルまで無毒化する* 「殺菌」…病原体の有無に関わらず菌を死滅させる 「滅菌」とは 参考画像:株式会社タマノ 卓上型高圧蒸気滅菌器 滅菌とは、文字通り「菌を滅ぼす」ことです。 病原体の有無に関わらず、ありとあらゆる菌を全て殺してしまう、という非常に強力な表現です。「殺菌」の最上級と言って良いと思います。「滅菌」用の製品には、高圧水蒸気や強い消毒薬がありますが、日常生活で目にする機会が多くはありませんが、病院の手術器具や注射などに必要な処置です。各滅菌器メーカーは、菌の100%除去が求められているわけではなく、日本国内では無菌性保証水準(Sterility Assurance Level:SAL)「100万分の1以下」に準拠すべしとされています。「滅菌」の方法は、 *蒸気を使って加熱する「高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)」 *乾燥した空気中で加熱する「乾熱滅菌」 *煮沸する「煮沸消毒」 などがあります。そのなかでも滅菌処理の時とコストが比較的軽い高圧蒸気滅菌が一般的に利用されています。清掃の現場においても、病院・ホテルなどの衛生の状態に特に配慮すべき場所では、高圧蒸気滅菌したゴム手袋やリネン類を使うことがあります。「滅菌」を整理すると、 医薬品・医薬部外品にのみ使用可能で、あらゆる菌を100%に近い状態まで死滅させること ということになります。 「静菌」とは 画像引用:ミツカンWebサイトより 「静菌」とは、微生物の活動を低下させ、増殖を抑制すること。 最後に、「静菌」について整理していきます。その意味は、用語から受ける印象のままに「菌を静める」ということです。あまり耳慣れない用語かもしれませんが、食料品などの保存のために使用されることも多い用語です。もっともポピュラーな「静菌」効果のある製品のひとつが「お酢」です。「お酢は身体に良い」と古くから言われ親しまれているのは、このことに起因します。濃度にもよりますが、様々な病原菌に対して効果を発揮してくれます。「静菌」は、 医薬品・医薬部外品以外で、微生物の活動を低下させ、増殖を抑制すること と整理することができます。 以上、今回は、菌・ウイルス対策製品に使用されている「抗菌」「除菌」「消毒」「殺菌」などのキーワードについて整理しました。それぞれの効果や、法律によっていろいろな用語が使い分けられていますが、それぞれの用語を正しく理解することで適切な衛生用品が選定でき、感染症から身を護っていただくことができると思います。 今回の調査が、皆様の健康のお役に立つことができますように。 (監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 「delfino施設まるごと抗菌」とは 感染症対策製品「delfino(デルフィーノ)」は、「感染ゼロをめざして」というコンセプトのもと、光触媒(酸化チタン)、抗菌触媒(銀)、三元触媒(プラチナ)などの触媒を組み合わせることで、それぞれの触媒反応が持つ効果を相乗的に発揮させながら、それぞれの弱点を補うという発想の抗ウイルス・抗菌・防臭剤です。そのデルフィーノを、専用噴霧器によってμ(ミクロン)単位の粒子で噴霧、密閉空間に充満させていくことで、壁面だけでなく、カウンター、チェア、デスク、キャビネットなどのあらゆるものを抗ウイルス・抗菌コーティングして、施設内での感染リスクを軽減します。お問い合わせは以下のリンクから! お問い合わせ 参照URL 医薬部外品の効能効果の範囲(厚生労働省)抗菌性物質の特性(農林水産省)洗剤・石けん公正取引協議会一般社団法人抗菌製品技術協議会(SIAA)「除菌」と「殺菌」の違い(毎日新聞)卓上型高圧蒸気滅菌器(株式会社タマノ)The Airplane Bathroom That Cleans Itself(boeing.com)「食酢」ミツカンWebサイト
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