2020年初に感染拡大が始まって以降、相変わらず猛威を奮い続けている新型コロナウイルス。世界の感染者数は1億2,252万人を突破。死者は270万人を超えました(2021年3月22日時点WHO発表資料より)。欧州では、イタリアなどで再びロックダウンに入る国も…。
日本国内では、延長されていた2度目の緊急事態宣言が3月21日に全面解除となりましたが、宮城県・仙台市などでは感染拡大にともない独自の緊急事態宣言(3月18日~4月11日)が発令されるなど、予断を許さない状況が続いています。
そんな中、やはり注目されるのはワクチンの動向。ブルームバーグのワクチン・トラッカーによれば、世界のワクチン接種は計3億9200万回を超えたと報じられています(2021年3月19日時点)。
一方、日本国内でもやっと、待望のワクチン接種が始まり、3月19日までに 578,835回の接種が完了したと報じられています。
先月は、「ワクチンとはそもそも何なのか?」についてリリースさせていただきました。
今回は、その続編。今後、国内で提供予定のワクチンを含め、いくつかの開発が先行するワクチンをピックアップしてお伝えしていきたいと思います。
新型コロナワクチンの開発状況
世界保健機構(WHO)の2月9日時点のまとめでは、臨床試験段階のCOVID-19ワクチンは63種類あり、前臨床の段階にあるものはさらに179種類あるとしています。
前回のおさらいになりますが、新型コロナウイルスのワクチンとなるプラットフォームは、DNAワクチン、mRNAワクチン、不活化ワクチン、弱毒化生ワクチン、組み換えスパイク蛋白ワクチン、ウイルスベクターワクチンなどが挙げられます。これらは全て新型コロナウイルスのスパイクタンパクに対して働きかけるワクチンです。
まずはそれらのワクチン技術について、加來先生のご提供資料をもとに以下の表にまとめました(クリックで拡大できます)。
この中で先行しているのは、報道でも触れる機会の多い以下の3社です。
・(米)ファイザー社&独ビオンテック社
・(英)オックスフォード大学&アストラゼネカ社
・(米)モデルナ社
西側諸国などでは日本に先駆けて承認され、一般へのワクチン接種が供されています。
前述のとおり日本国内では、2月17日よりファイザー社製ワクチンの接種が開始されました。政府は、3社のワクチンの合計で、3億回分以上のワクチン提供の契約が締結されていると発表しています。
接種は、医療従事者、高齢者(1957年以前に生まれた人)、高齢者以外で基礎疾患を有する人や高齢者施設の従事者、それ以外の人、という順序、「原則、居住地の市町村」で無料提供される予定です。
一般に供される日が、一日でも早く訪れて欲しいものです。
先行する新型コロナワクチン
ここからは、開発の先行する3社のワクチンについて、その技術や特徴をみていきたいと思います。
ファイザー(米)&ビオンテック(独)
先行している3社のワクチンのうち、ファイザー社製とモデルナ社製のワクチンは、
mRNA技術で作成された歴史上初めてのワクチン
です。これはRNAを使って、免疫反応を引き起こすタンパク質を生成するように体に促すワクチン。アストラゼネカ製ワクチン(弱毒化あるいは不活性化されたウイルス株を用いて、体の防御機能を起動させるワクチン)などとはまったく違った技術によって開発されています。他社のワクチンよりも、データ上有効性が高いとされ、信頼を集めています。
イギリスでは、既に国民の30%以上にあたる2,000万人以上の人が、ファイザー社製、アストラゼネカ社製のいずれかのワクチンを、少なくとも1回は接種を受けていると報じられています。
日本国内でも、もっとも早く正式承認されたワクチン(2021年2月14日)で、約1億4400万回分(約7200万人分)の供給を受けることで正式に契約していると発表されています。
このワクチンと課題とされているのは、「mRNAが非常に傷みやすい成分であるため、マイナス70以下の特別な温度管理が必要」という保管の難易度の高さ。輸送時にはさらに低い温度管理が求められ、物流の問題が大きな障壁だと言われています。
アストラゼネカ(英)&オックスフォード大学
アスラゼネカ社製ワクチンは、弱毒化したウイルス株を用いるウイルスベクターワクチン。WHOは、ファイザー社製ワクチンに続く2例目として、緊急使用を承認しています。
チンパンジー由来の一般的な風邪のアデノウイルスを弱毒化し、体内で増殖しないように処理をして、そこにSARS-CoV-2ウイルス表面のスパイクタンパク質の遺伝物質を組み込んだものを使用します。ワクチン接種後、SARS-CoV-2ウイルスの表面のスパイクタンパク質が体内で形成され、実際にSARS-CoV-2ウイルスに感染した時に、ウイルスを攻撃するよう免疫システムが刺激されます。
(アストラゼネカ社Webサイトより)
日本国内では、2月5日に承認申請が実施されています。政府は、1億2000万回分(約6000万人分)の供給を受けることで合意していると報じています。
アストラゼネカ社製は、2~8度と通常の冷蔵庫で保存することができ、マイナス70度以下の温度管理が必要とされるファイザー社製と比べて、物流面で大きなアドバンテージがあります。また、先行する3社のうちで最も安価(1.78ユーロ(2021年3月20日現在の為替で約231円))との情報も。益々普及への期待が高まっています。
このワクチンについては、高齢者への有効性を疑問視する声もあります。アメリカ政府のモンセフ・スラウイ主席顧問は、
「高齢者への有効性はさらなる裏付けが必要。臨床試験では十分な数の高齢者の被験者が採用されていない」
と雑誌のインタビューで回答しています。
また、3月13日には「欧州で10カ国以上が『安全上の懸念がある』ために同社のワクチンの接種を中断した」と欧州各社のメディアが報じています。報告されているという「深刻な血栓の発生」との因果関係の究明など、データの検証が待たれます。
モデルナ(米)
ファイザー社製のワクチン同様、mRNA技術で作成されたワクチン。日本国内では、武田薬品工業が3月5日に製造販売承認申請を実施しており、5000万回分(2500万人分)の供給を受ける契約が取り交わされていると報じられています。
モデルナ社製ワクチンの保管温度はマイナス20度(ファイザー社製はマイナス70度)。冷蔵保存(2~8度)では30日間も保存が可能(ファイザー社製が5日間の保存期限)と報じられています。高い有効性が期待されるmRNAワクチンの中で、その扱いやすさが注目を集めています。
一方で、価格についてはファイザー社製と比較して2割前後高いと報じられています(ファイザー社:12ユーロ(2021年3月20日時点の為替で 約 1,561円)、モデルナ社製は18ドル(2021年3月20日現在の為替で約1,960円))。
日本国内でのワクチン開発の状況
さて、海外勢のワクチンが目立ちますが、日本国内での開発状況はどうなのでしょうか。
国産のワクチンの開発は、これまでに2社が人への投与も含めた安全性や効果などを確認する臨床試験段階に入っている状況です。ここからは、その2社について紹介させていただきます。
アンジェス・大阪大学・タカラバイオ
大阪のバイオベンチャーであるアンジェス社。このアンジェスが開発しているワクチンは、ファイザー社やモデルナ社(mRNAワクチン)、アストラゼネカ社(ウイルスベクターワクチン)とは異なり、DNAワクチンです。
国産ワクチンとしては最速の2020年6月から臨床試験をはじめており、2020年12月の発表では、臨床試験対象者を500人に増やしその安全性と免疫原性の評価を行なっています。
引用:アンジェス社 Webサイト「新型コロナウイルス感染症関連情報」より
塩野義製薬・UMNファーマ・国立感染症研究所
もう一社は、創業140年を超える老舗製薬会社である塩野義製薬。同社の開発するワクチンは、組み換えタンパク質ワクチン。
遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に投与されるため、インフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性を基に承認・実用化されている確立された技術だといいます。一方で、抗原発現や精製に一定の開発期間を要するとのこと。
12月に開始された第1/2相臨床試験では、200例以上の日本人成人を対象に試験を実施。3週間間隔でワクチンを2回接種した際の安全性、忍容性、免疫原性を接種後1年間追跡評価すると発表しています。
現在、最終段階である、世界の流行地域の数万人を対象にした 偽薬を用いた大規模な治験に向けて準備が進められていますが、世界では米ファイザー製や英アストラゼネカ製など、既に実用化されたワクチンの接種が進んでいることから、未承認のワクチンの治験参加者の確保が難しく、年内の治験実施の調整が難航しているとも。
同社は、引き続き臨床試験の実施と並行して、2021年末までに3,000万人分以上のワクチン生産体制を整備することを目標に、生産設備の構築・増強、大量生産に向けた製造方法の最適化を進めていくと発表しています。
以上、国内開発の状況をピックアップしました。既に接種開始されている欧米各社に大きなアドバンテージがあるとはいえ、世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルスに対するワクチンが日本国内で開発され、世界中で評価を得ている姿は見てみたいもの。応援していきたいと思います。
まとめ
今回は、新型コロナワクチンの続編の情報をお届けしました。
ワクチン接種は、人によっては、体内に入ることによってアナフィラキシーショックなどアレルギー症状が表れる可能性も。一般のワクチン接種が開始されるまでに、国内でもそういった症例が報じられていくことになると思います。
重篤な症状が表れる人も一定割合出ることが予想されますが、読者の皆様は、その症例を把握されるとともに、起きている確率や、ご自身が元来お持ちのアレルギー情報とも照らし合わせて、ワクチン接種についてご検討ください。
「delfino施設まるごと抗菌」とは
感染症対策製品「delfino(デルフィーノ)」は、「感染ゼロをめざして」というコンセプトのもと、光触媒(酸化チタン)、抗菌触媒(銀)、三元触媒(プラチナ)などの触媒を組み合わせることで、それぞれの触媒反応が持つ効果を相乗的に発揮させながら、それぞれの弱点を補うという発想の抗ウイルス・抗菌・防臭剤です。
そのデルフィーノを、専用噴霧器によってμ(ミクロン)単位の粒子で噴霧、密閉空間に充満させていくことで、壁面だけでなく、カウンター、チェア、デスク、キャビネットなどのあらゆるものを抗ウイルス・抗菌コーティングして、施設内での感染リスクを軽減します。
お問い合わせは以下のリンクから!
参照URL
WHO Coronavirus(COVID-19)Dashboard
新型コロナ「ファイザー」と「モデルナ」のワクチンの特徴は(NHK)
英オックスフォード/アストラゼネカのワクチン、イギリスで特定の変異株にも有効と
EUのワクチン価格「暴露」1回分225~1860円―ベルギー閣外相
新型コロナウイルスDNAワクチン:2/3相臨床試験における接種開始について(アンジェス)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの第1/2相臨床試験開始のお知らせ(シオノギ)