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東京で3年ぶり「はしか(麻しん)」の感染報告
世界各地で流行中の「はしか」の正しい知識と予防策今年に入り、東京や大阪をはじめとして、国内で「はしか(麻しん)」の感染報告が確認されています。感染者は海外で感染したとみられており、海外から観光旅行で日本に来た人や海外へ出張や旅行に行った人が日本に帰ってきてから、感染が確認されています。日本は、平成22年(2010年)11月以降の「はしか(麻しん)」のウイルス分離・検出状況については、海外由来型のみ確認されており、平成27年(2015年)3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、日本が麻しんの排除状態にあることが認定されています。厚生労働省は「仕事や旅行で海外に行く人などはワクチンの接種歴や抗体の状況を確認したり、必要に応じてワクチンの接種を検討してほしい」と呼びかけています。 厚生労働省WEB「麻しんについて」より 今回のDELMAGAは、感染症・疫学がご専門の防衛医科大学校の加來先生に監修いただきながら、「はしか(麻しん)」の特徴、症状、感染経路、予防策などの情報をお届けしていきたいと思います。最後までお付き合いください。 国内における「はしか(麻しん)」の感染状況日本は2015年にWHO(世界保健機関)より『麻疹排除状態にある』と認定を受けています。排除達成後も海外からの旅行者を発端とした集団発生、医療機関における集団発生、ワクチン接種率が低い集団における集団発生などがあり、2019年の感染報告数は排除達成後最多の744例となりましたが、2020年以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴う国内外の人の往来制限などの影響もあり、年間届出数は2020年:10例、2021年:6例、2022年:6例となり、人の往来が戻り始めた2023年は28例でした。日本においては、今後も海外からの旅行者がさらに増えていく中で、海外からの麻しん持ち込みのリスクもより高まることが予想されます。今年に入ってから2024年は第6週(2月5日~11日)までは、「はしか(麻しん)」の国内での発生はありませんでしたが、第7週(2月12日~18日)に東京都内での1名の発生を皮切りに、各地で散発的に発生がみられるようになりました。これは海外で感染し国内で発症する「輸入事例」が起点となったものです。いくつか例をあげますと、まずは奈良県での事例です。2月23日に奈良市ではじめて麻疹の届け出がありました。その後、3月6日にこの患者の接触とされた方からの発生がみられました。1人目は外国人旅行者の男性(20代)で2月7日に日本に入国し、その後、奈良市内に滞在中の2月19日に発症。2人目は旅行者の接触があったとされる男性(30代)で3月6日に「はしか(麻しん)」と診断されました。二つ目は大阪府での事例です。2月29日に東大阪市で男性(20代)の感染が報告されました。この男性は昨年からアジアや中東を旅行し、2月24日にアブダビ発の航空機で関西空港に帰着。航空機に同乗していた乗客8人が相次いで「はしか(麻しん)」と診断されました。 NHK WEB「はしか感染者相次ぐ 空気感染も ワクチン接種が必要な世代は…」 都内でも感染報告さきほどの二つ目の報告にある感染者と航空機で同乗していた8人のうち大阪市の女性(20代)は滞在先の東京で発症し、都内医療機関を受診して麻疹の感染が確認。東京都は、女性が利用した新幹線や飲食店の具体的な情報を公開し、同じ場所にいた人に対し、体調に異変があった場合は事前に連絡したうえで公共交通機関を使わずに医療機関を受診するよう呼びかけました。これは、感染拡大を防ぐために、曝露された方に対する注意喚起を促して、早期発見・治療に結び付けるために行われたものです。【東京都による報道発表】女性(20代)は・3月7日(木)午後1時45分大阪駅発東海道新幹線のぞみ24号の6号車に乗車し、午後4時8分に品川駅に到着し下車。・同日、午後9時から午後11時ごろまで、都内の●●● 銀座コリドー通り店に滞在。※お店●●●へのお問い合わせはご遠慮ください。 「はしか(麻しん)」は感染力が強く、特効薬がない「はしか(麻しん)」は、・麻しんウイルスによる発熱性、発疹性の感染症・感染経路は、主に空気感染(感染したヒトの呼気中に含まれる空気を吸い込んで感染)・潜伏期間は、通常は10日~12日(早い人で7日から遅い人で21日に発病することもあります。)・免疫を有さない人に対しては、感染力が非常につよい。・免疫を有さない人が感染すると、ほぼ間違いなく症状が出るが、ワクチン接種歴が1回の人が感染すると症状がわかりにくい麻疹(修飾麻疹)を発症する。・特効薬はなく、治療は基本的に対処療法(病気の症状をやわらげる)・合併症により生死にかかわることがある改めて、「はしか(麻しん)」についての情報をまとめます。症状は、発熱、咳・鼻水、全身の発疹感染後10~12日ぐらいで発症することが多く、38度以上の発熱が2~4日程度続き、咳・鼻水などの気道症状、結膜炎(目の充血、目やに・涙)などが現れ次第に症状が強くなります。これをカタル症状といいます。乳幼児では下痢や腹痛を伴うことがあります。口内の頬粘膜にできる白い斑点(コプリック斑)や全身に発疹が出ます。一度発熱が下がりかけた後に、再び高熱(39.5度以上になることが多い)が3~4日続き、はしか(麻しん)特有の赤い発疹が出ます。発疹は顔面から出始め、身体全体に広がっていき、その後褐色の色素沈着がしばらく残ります。通常であれば、7~10日間程度で症状は徐々に回復します。合併症として、肺炎、脳炎、中耳炎、クループ(のどの奥が感染により腫れてしまうことで、声がかすれたり、息を吸うときにヒューヒューと音がしたりすること)などがあります。重症な肺炎では、呼吸困難で集中治療室に入院したり、発症1,000人に1~2人の頻度で生じる急性脳炎では、生命に危険が及んだり後遺症を残すこともあります。幼児、免疫不全などの基礎疾患のあるお子さん、妊婦さんは重症化に注意が必要です。妊婦さんが感染すると、重症化だけではなく、流産や早産を起こす可能性もあります。 感染経路は「空気感染」はしか(麻しん)の感染経路は、「接触感染」「飛沫感染」だけでなく、「空気感染」でも感染が拡大していきます。接触感染:ウイルスが付着した手を介して感染が広がる飛沫感染:咳やくしゃみで飛散したウイルスを含む飛沫で感染が広がる空気感染:呼吸により飛散し、空間を漂うウイルスで感染が広がる「空気感染」は、集団の場で1人の発症があった場合、同じ空間にいる人は、感染してしまう可能性があります。麻疹ウイルスは、浮遊中や付着した物質の表面上で最大2時間の活性があると言われており、その間2時間は感染力を持つといえます。はしか(麻しん)は非常に感染力が強く、免疫のない人が感染すると、ほぼ100%近くの人が発症すると言われています。また感染者1人が免疫を有さない人に何人にうつすかを示す「基本再生産数(R0)」は、12~18人になります。(参考:インフルエンザでは1~2人、COVID-19では2~3人)発症した患者さんでは、発熱の1日前の無症状期から、すなわち発疹の出る4日前からで感染力があると言われていますので、早期発見と対策を行わないと感染拡大が起こってしまいます。 対策はワクチン接種麻しんは空気感染もするので、手洗い・マスクのみで予防が難しく、最も有効な予防法はワクチン接種になります。麻しんの患者さんに接触した場合でも、72時間以内に麻しんワクチンの接種をすれば発症を予防できるとされていますが、現実的な方法ではありません。やはり事前にしっかりと2回接種しておくことが重要です。ワクチンの有効性は、インフルエンザワクチンやCOVID-19ワクチンと異なり、感染予防効果が非常に高いです。現在、国内では生後1歳を過ぎた段階で1回目、小学校に入学する前に2回目のワクチンを接種することが定期接種として推奨されています。というのもワクチン1回接種による免疫獲得率は93~95%以上ですが、時間の経過とともにその効果が薄れてしまいます。そこで2回目の接種を行い、免疫獲得率を97~99%以上に高めるという作戦です。初回接種後の反応としては発熱が約20~30%、発疹は約10%に認められますが、いずれも軽症であり、ほとんどの症状は自然に消失します。 このワクチンの2回接種による定期接種が開始されたのは2006年からですので、年代によって接種回数が1回の人がいます。ワクチンの接種歴は母子手帳などで調べられます。一度,麻しんにかかった人は、強い免疫がのこるため接種は必要ありませんが、症状の程度は個人により異なるので検査を行って麻しん抗体価があるかを確認することが重要です。お子さまのワクチン接種は、小学校入学前に2回2006年4月1日以降、麻疹・風疹混合生ワクチン (measles-rubella:MRワクチン)の定期の予防接種が始まり、 2006年6月2日から下記の年齢での2回接種となりました。第1期、第2期を過ぎてしまうと定期の予防接種として受けられなくなってしまいます。 お子さまの小学校の入学前までに2回目のワクチン接種がすんでいるかを確認し、第2期でまだ麻疹と風疹の予防接種をそれぞれ2回ずつ受けていないお子さまは、 かかりつけ医やお近くの医療機関にご相談ください。接種医療機関は、お住まいの市町村(特別区)にお問い合わせください。 国立感染症研究所 「小学校入学準備に 2回目の麻疹・風疹ワクチンを!」 症状がある場合かかりつけ医や医療機関に電話などで「はしま(麻しん)の疑い」があることや「症状」を伝えて、以降は医療機関の指示に従ってください。医療機関への移動は、公共交通機関の利用は可能な限り避けてください。 参考URL・厚生労働省 麻しんについてhttps://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html ・国立成育医療研究センター はしか(麻疹ウイルス感染症)にご注意ください。https://www.ncchd.go.jp/center/pr/info/0526.html ・国立感染症研究所 麻疹とはhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html ・国立感染症研究所 小学校入学準備に 2回目の麻疹・風疹ワクチンを!https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles/221-infectious-diseases/disease-based/ma/measles/590-cpn08.html ・東洋経済 ON LINE 東京でも感染者が見つかった「はしか」どう防ぐ?https://toyokeizai.net/articles/-/740960 ・Forbes 世界的流行のはしか、自分と周囲を守るために知っておくことhttps://forbesjapan.com/articles/detail/69685 ・FNプライムオンライン感染力極めて高い“はしか”都内で確認…東海道新幹線乗り銀座で飲食も 3月にUAEから帰国https://www.fnn.jp/articles/-/669693 ・東京都 報道発表資料 保健医療局 「麻しん(はしか)患者の発生について」https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/03/12/07.html
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患者数11週連続増加、どうする!?「コロナとの共生」!
新型コロナウイルス感染症は、感染症法上での位置づけが2023年(令和5年)5月8日に「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる二類相当)」から「五類感染症」になりました。昨年8月から始まった「第9波」の流行が底をうったのが11月中旬です。しかし11月下旬から再び感染報告数が増え始め、DELMAGAを書いている時点での最新の速報値(2/13発表)によると、2月4日の週までに、11週連続で感染報告数が増加しており、「第10波」の真っ最中です。 今回のDELMAGAは、感染症・疫学がご専門の防衛医科大学校の加來先生に監修いただきながら、現在流行している新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の特徴などを分かり易く整理し、改めて注意しておきたい情報をお届けしていきたいと思います。最後までお付き合いください。 11週連続で感染報告増加現在コロナウイルスの流行状況は、週1回、全国の約5,000の医療機関から新規感染者数を報告してもらう「定点把握」となっており、2024年1月29日~2月4日の定点あたりの平均患者数は16.15人となっていますが、これはその前の週(1月22日~1月29日)の14.93人に比べると増加傾向となっています。都道府県別にみると石川県の24.52人が一番多く、福島県24.49人、愛知県22.55人、茨城県22.46人と続いていますが、47都道府県のなかで前週から減っているのは山口県、徳島県、富山県、埼玉県、栃木県、岩手県の6県にとどまっているという状況です。年齢群でみると10歳未満が最も多く、定点当たり4.69、次いで10~14歳が2.51ですが、60歳以上の高齢者では1.00を下回っています。一方で入院患者の届出数は、全国で3,400名前後となっており60歳代311名、70歳代843名、80歳以上1,639名となっており、あわせると全体の80%となっています。 厚生労働省は、冬の流行拡大に注意を呼び掛けており、現在のコロナウイルスの流行状況については「特に若い年代で感染者の増加が目立っている。冬休みが終わり、学校が再開したことも要因として考えれるので、学校での感染対策などを引き続き徹底して欲しい」としています。また、今シーズンはインフルエンザの同時流行が起こっています。インフルエンザA(H1N1株、H3N2株)に加えて、インフルエンザBの流行が確認されています。また、鼻水や鼻づまりなどの症状を主とする花粉症も増え始めています。よく似た症状の患者が増えていることから、医療の現場でも交雑を防ぐなどの工夫が続けられています。 コロナウイルスのいま、これからコロナウイルスによるパンデミック以降、国内ではアルファ、デルタなど変異株が猛威を振るっていましたが、いま国内で流行している主流は、民間検査機関からの検体に基づく情報では「オミクロン株の亜種BA.2系統のJN.1が31.5%、JN.1.4 が14.2%、XBBの一種であるHK.3が10.7%」となっており、明らかに世代交代が起こってきていますこのJN.1は、WHOも「注目すべき変異株」に分類しているウイルス株です。JN.1は「免疫逃避」という一度できた抗体をすり抜ける能力が増しており、2度3度と感染してしまう可能性があります。また、ヒトからヒトへの感染力も高くなっていると言われていますが、重症化は従来のXBB株と変わらないと報告されています。 わたしたちにできることパンデミック時の緊急事態宣言下においては政府の専門家会議より「新しい生活様式」という方針が打ち出されましたが、現在はコロナウイルス感染症が五類感染症となり、わたしたちを取り巻く状況も変わっています。ただし、感染症対策の基本は大きくは変わりません。誰にでも感染してしまう可能性はあり、誰にでも周りにうつしてしまう可能性があります。可能性を意識して、思い込みではない正しい知識をもとに自分でできる行動があります。 <わたしたちにできる基本的な5つの感染症対策>(1) 体調不安や症状があるときは自宅で療養するか医療機関を受診する(2) その場に応じたマスクの着用と症状がある場合の咳エチケット(3) 3蜜(密閉、密集、密接)対策と空間の換気(4) 手洗いの励行(5) 適切な運動、睡眠、食事 (1)体調不安や症状があるときは自宅で療養するか医療機関を受診する体調不良や発熱などの症状がある場合には、無理せずに自宅で療養してください。早めに市販薬で症状を緩和させることも重要ですが、基礎疾患をお持ちの方はぜひ医療機関を受診して、きちんと診察を受けてください。過度な受診控えは健康上のリスクを高めてしまう可能性があります。 (2)その場に応じたマスクの着用と症状がある場合の咳エチケット新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの流行期に自身が罹患しないために、・通勤ラッシュ時などの混雑した電車やバスに乗るとき・何らかの呼吸器症状のある人のお世話をしたり、面会したりするときなどはマスクの着用が効果的です。 自身が知らないうちに広げないために、・咳やくしゃみなどの症状があるときは、マスクを装着します。 これは咳エチケットとしてのマスク装着です。・医療機関の受診時や高齢者施設などを訪問するときも、マスクを装着します。 新型コロナウイルス感染症が無症状の感染期にも人への感染力があるからです。・高齢者、持病のある人、妊婦さんなどと会うときは、自身の体調管理を厳重に行ってください。 大切な人を守るためです。ただし、マスクの着用については、五類移行前の令和5年3月13日より、本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう配慮が必要です。上記の基準を参考にして、皆さん自らが正しい判断をされるのを期待いたします。 (3)3蜜(密閉、密集、密接)対策と空間の換気飛沫感染やエアロゾル感染のリスクを下げる方法として、3蜜対策は基本となります。その中で換気が可能であればすぐにでも取り入れてください。こまめに窓を開けて行う自然換気も効果的です。どうしても換気ができないような部屋については、空気清浄機を利用することをおすすめします。 (4)手洗いの励行手洗い、手指消毒は感染対策の「基本のキ」です。五類以降は、社会全体であまり重視されていない傾向があるようなので心配しています。接触予防のための対策としては、きわめて有効ですので、“コロナで学んだこと”の一つとして継続してください。 (5)適度な運動、睡眠、食事感染症対策に限ったことではありませんが、健康維持のため、適度な運動、睡眠、食事はとても重要です。リモートワークの広がりにより在宅で過ごす方も増えましたが、日常的にバランスの良い食事を摂り、適度な運動を行い、ぐっすり睡眠をとりましょう。 お子さまが感染してしまったら感染対策に注意をしていても感染してしまうことがあります。お子様さまコロナウイルスに感染してしまった時のポイントをまとめます。【お子さま(コロナウイルスに感染された方)】お子様は、大人に比べてさまざまな呼吸器感染症に罹患してしまいます。症状からは判断できないことが多いので、かかりつけの医療機関を受診させてください。何らかの症状があるうちは、ウイルスを排出しているものと考えて、家庭内での二次的な広がりに注意してください。 【お世話をする方や同居家族について】まずは、ご自身の体調に注意してください。・感染した家族の方が、ウイルスを排出させなくなるまで(おおむね発症後5日程度)の間は、家庭内で感染するリスクがあります。タオルの共有を避けて、寝室や食事をとる場所を分けるようにしてください。・外出するときには人混みを避け、マスクの着用をおすすめします。高齢者等のハイリスク者との接触を控えるなど、周りの方へうつさないように配慮してください。 <お子さまの観察ポイント>機嫌、食欲、呼吸のようすなどを観察してください。機嫌がよく、食欲があり、顔色が普通であれば基本的に心配いりません。慌てずに様子を見たうえで、かかりつけ医にご相談ください。受診を迷った場合、夜間や休日の場合は電話相談窓口(「救急車利用マニュアル」、「こどもの救急」等関係ウェブサイトの参照や「#7119(救急要請相談)」、「#8000(こども医療相談)」など)をご利用してください。 <家庭できる感染対策>1.こまめに換気をする 共用スペースや他の部屋も頻繁に換気をします。窓を開けて行う自然換気が最も推奨されますが、閉鎖空間の場合には空気清浄機などを利用してください。 2.可能な範囲で部屋を分けるお世話(看病)する方はできるだけ限定して行い、接触する時間をなるべく短くします。ただ、子どもは自らの体調管理や体調不良の意思表示が十分にできないことがあるので、健康状態のチェックを入念に行います。 3.可能な範囲でマスクをするお子さま本人を含めて、同居家族全員はできるだけマスク着用します。ただし、乳幼児(小学校に上がる前まで)のマスク着用には注意が必要で、特に2歳未満のお子さまへのマスク着用はやめましょう。 4.こまめに手洗いをする目に見えて汚れが付いた場合には、石けんで洗い落としますが、そうでなければ(食事の出し入れでお子さんの部屋から出た後など)は、アルコール製剤やそれに類似の手指消毒薬を使用してください。 5.汚れたリネン、洋服は洗濯し、ゴミは密閉して捨てるさいごに令和5年5月8日にコロナウイルス感染症の分類が二類感染症から五類感染症になり、季節性インフルエンザなどと同じ分類になりました。パンデミックや緊急事態宣言などの重々しい社会の雰囲気から「コロナとの共生」に向けて、日常生活や経済活動が動き出しています。五類になったとはいえ、コロナウイルスの性質や感染症の特徴が大きく変わったわけではありません。2024年に入り、いまは「第10波」とも「冬の波」ともいわれています。「自分は大丈夫(かからない)」とか、「前回コロナにかかったが、そんなに(症状が)つらくなかった」など声を聞くことがあります。自分は大丈夫または症状が弱かったとしても、周りにいる大切な誰かに感染症をうつしてしまう可能性もあります。そして、その大切な誰かが、またその周りにいる他の大切な誰かに感染症をうつしてしまうという…というスパイラルも考えられます。基本的な感染症対策は、いまできる対策や簡単にできる対策です。ご自身のため、周りの方のため、改めて再認識していただければとの思いの中、今回のテーマを取り上げました。 参考URL・国立感染症研究所 IDWR速報データ 2024年第5週https://www.niid.go.jp/niid/ja/data.html ・科学技術振興機構 「サイエンスポータル」サイエンスクリップhttps://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20240124_g01/ ・厚生労働省 感染対策・健康や医療の相談情報https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kenkou-iryousoudan.html#h2_1 ・厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の五類感染症移行後の対応についてhttps://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html ・厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(変異株)への対応https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000922185.pdf ・東京都医学総合研究所 新型コロナウイルスや医学・生命科学全般に関する最新情報https://www.igakuken.or.jp/r-info/covid-19-info198.html ・NHK 「NEWS WEB」新型コロナ、インフルエンザいずれも患者数増加 対策徹底をhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20240202/k10014344831000.html
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あなたのまわりにも!?
患者数増!インフルエンザ流行、感染ピークは年末に??例年11月~12月ごろに流行が始まり、年が明けて1月からピークを迎える冬の感染症のイメージが強いインフルエンザ。 しかしながら、今年は9月から流行の拡大が始まり、厚生9月時点での労働省の発表(9/22発表)では、東京都を含む7つの自治体で注意報レベルに達しているとの発表がありました。東京都においては1999年の統計開始以来、最も早い9月21日にインフルエンザの注意報が出ています。 今回も、感染症・疫学の権威である防衛医科大学校の加來先生に監修いただき、季節性インフルエンザの特徴や注意点などを分かり易く整理しながら、インフルエンザの基礎情報をお届けしていきたいと思います。最後までお付き合いください。 インフルエンザを知ろうインフルエンザとは インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる「急性呼吸器感染症(急な発熱を伴う風邪のような症状が出る感染症)」で、インフルエンザウイルスが喉、気管支、肺で感染し、増殖することにより症状があらわれます。 インフルエンザはどうやってうつる?(感染経路) インフルエンザの感染経路は主に2つあります。 インフルエンザは、ウイルスが手に付着しただけで感染することはありません。ウイルスが付着した手で、口や鼻、目などの粘膜を触れることで感染します。 注1)「感染」とは、インフルエンザウイルスが標的となる細胞の中入ること。 注2)「発症(発病)」とは、なんらかの症状が出ること。 「感染」しても症状が出ないという場合もあります。これを「不顕性感染」といいます。 どんな症状がでるの?(主な症状) 突然の発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などが現れ、次に咳、鼻みず、咽頭痛などの上気道症状が続き、約1週間でおさまります。 主な合併症として肺炎、脳症などがあります。 インフルエンザにかかったら インフルエンザウイルスは体内で感染後、増殖のスピードが速く、発熱(高熱)などの症状が急激に進みます。特にインフルエンザが流行している時期に発熱、咳、のどの痛み、倦怠感、頭痛、鼻みず・鼻づまりなどの症状が出たときは、早めに医療機関での受診を心掛けてください。 持病がある方、重症化の可能性が高いといわれる方々は、なるべく早めに医師に相談するようにしてください。 インフルエンザにかかった後の注意点<療養中>〔かかった人(本人)〕・安静にして休養をとる。・睡眠を十分にとる。・水分補給をしっかりとする。・周りに感染させないためにマスクを着用する。・人ごみなどへの外出を控える・学校や職場などは感染を拡大させる可能性があるため休むようにする。〔同居している方や看病をしている方〕・看護をしたあとは、手をこまめに洗う。・小さいお子さんが療養している場合は、大人がしっかりと見守るようにする。・持病がある方、妊娠している方は、可能な限りなるべく別の部屋で過ごす。<回復後> 熱が下がっても、インフルエンザの感染力は残っています。特に治療薬などにより急激な高熱が、すぐにすっと下がることがあります。完全に感染力がなくなる時期については個人差もあると言われていますが「体調は悪くないな」「もう治ったかな」「元気だし仕事に(学校に)行けるかな」と思っていても、まだまだ他の人に感染させるウイルスを体内に持っている可能性があります。 外出を控える日数などについては医師や医療機関にご相談ください。現在、学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」を出席停止期間と定めています。 インフルエンザにかからないために(予防/感染防止) 基本的な感染対策 みなさんが2020年からCOVID-19として、しっかりと行ってきた3密(密集、密閉、緊密)を避けること、基本的な感染対策(飛沫感染対策、エアロゾル感染対策、接触感染対策)は、インフルエンザ対策に対してももちろん有効です。 感染が大きく拡大している場合には、リスク(通勤電車の中、人込みの中など)に応じて適切なマスクの着用をお勧めします。 マスク着用には2つの意味があります。まずは、自らへの感染リスクを下げるためです。この場合のマスクの着用が効果的な場面としては、 ・発熱や席をしている人のケアを行う時 ・医療機関を受診する時、見舞いに行く時 ・高齢者など重症化リスクの高い方を訪問する時 ・インフルエンザの流行期に混雑した場所に行く時もう一つは、自分が感染した場合に周辺へのウイルス拡散を防ぐためです。この場合としては、 ・発熱、倦怠感などの症状がある場合 ・鼻水、咳などの症状がある場合(この場合のマスク着用は「咳エチケット」の一環です。)「咳エチケット」とは…・咳・くしゃみが出る時は、他の人にうつさないためにマスクを着用しましょう。マスクを持っていない場合は、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけて1m以上離れましょう。・鼻みず・痰などを含んだティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、 手のひらで咳やくしゃみを受け止めた時はすぐに手を洗いましょう。・咳をしている人にマスクの着用をお願いしましょう。 予防接種 インフルエンザワクチンの予防接種には、発症をある程度抑える効果や、重症化を予防する効果があり、特に高齢者や基礎疾患のある方など、罹患すると重症化する可能性が高い方には効果が高いと考えられます。高齢者の方はインフレンザのあとに細菌性の肺炎を合併される方が多いですが、そのためには「肺炎球菌ワクチン」が有効です。65歳の方には定期接種となっていますので、ぜひ、こちらも注意してください。 さいごに 新型コロナウイルスの流行以来、2021年、2022年は流行がありませんでしたが、今年(2023年)に入り季節性インフルエンザの流行がみられました。 3月には一旦収束に向かいましたが、4月以降も患者数が確認され、例年なら流行していない6月~8月という夏の時期にも患者数の確認が続き、そして、9月に新学期を迎える学校などを中心に、さらに流行が拡大し、現在の流行に至っています。 流行のピークの予想は難しいですが、年末から年始にかけてピークになるのではないかと言われています。年末年始は人の移動も多く、家族、親族、友人・知人など様々な人と会う機会も多くなります。そんな時期とピークが重なります。正しい知識と適切な対策をもって、楽しい年末年始を迎えられるよう今回「インフルエンザ」というテーマを取り上げました。 参照URL・厚生労働省 令和5年度インフルエンザQ&Ahttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2023.html・国立感染研究所 インフルエンザとはhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html・一般社団法人日本感染症学会提言 2022-2023年シーズンのインフルエンザ対策について(一般の方々へ)https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=46・一般社団法人日本感染症学会ガイドライン2023/24シーズンにおけるインフルエンザワクチン等の接種に関する考え方chromeextension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/influenza_vaccine_230925.pdf・一般社団法人日本呼吸器学会 呼吸器の病気 インフルエンザ https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-02.html・厚生労働省 インフルエンザの基礎知識chromeextension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/file/dl/File01.pdf・日本医師会 インフルエンザ総合対策https://www.med.or.jp/doctor/kansen/influenza/005423.html
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感染者数過去最多。子どもの三大夏風邪のひとつ「プール熱」
夏になると子どもを中心に患者数が増える感染症が、「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」。"子どもの三大夏風邪"とも呼ばれ、各所で注意喚起されています。 そのうち今回取り上げるのは「プール熱」。感染力が強く、環境中でも感染力を保ったまま生存できる、私たちにとって厄介な存在です。2023年シーズンの感染者数は過去10年で最多、以下のグラフでもその多さが際立っていることが分かります。 咽頭結膜熱の定点あたりの感染者数の推移(NIID国立感染症研究所)画像クリックで拡大できます 今回も、感染症・疫学の権威である防衛医科大学校の加來先生に監修いただきながら、特徴や注意点などを分かり易く整理してお届けしていきたいと思います。最後までお付き合いください。 プール熱(咽頭結膜熱)とは プール熱は、アデノウイルス(Adenovirus: AdV)に感染することで引き起こされる感染症で、正式には「咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)」といいます。プールでの感染例が多いことから、日本では一般に「プール熱」と呼ばれています。 画像引用:アデノウイルスの模式図(大阪健康安全基盤研究所) プール熱を引き起こすアデノウイルスには複数の型がありますが、そのほとんどが自然治癒します。しかし、稀に肺炎などを引き起こし重症化するケースもあるため注意が必要です。プール熱にかかると免疫獲得しますが、あくまでも複数ある型のなかの特定の型についての免疫に過ぎません。別の型に感染した場合には、やはりプール熱にかかってしまうことになります。 アデノウイルスは高温多湿の環境を好むため、プール熱は特に6月頃から増えはじめ、7〜8月にピークをむかえます。しかし、1年中かかる可能性があり、最近では、秋~冬にかけても小流行が見られます。 主な感染経路は、飛沫感染と接触感染。アデノウイルスは非常に感染力が強く、上気道(口、鼻、喉)、目の結膜から体内に入り感染します。プールでの感染の原因は、消毒が不十分な水から結膜への直接侵入による感染と考えられています。 プール熱の症状 画像引用:咽頭結膜炎に気をつけよう(神奈川県衛生研究所) プール熱の潜伏期期(感染後、発症するまでの期間)は5~7日です。生後14日以内の新生児への感染は重症化しやすく全身の感染症になるため特に注意しなければなりません。主な症状は発熱、喉が腫れる咽頭炎、目が充血する結膜炎の3つです。 ・発 熱 … 38℃から40℃の高熱が3日から1週間程度続く・咽頭炎 … 喉の痛み(喉や扁桃腺が赤く腫れ、扁桃腺に白色の浸出物がみられる)・結膜炎 … 目が真っ赤に充血 結膜炎には、充血、痛み、かゆみ、目やに、まぶしく感じる、涙が止まらないなどの症状が挙げられます。一般に、まずは片方の目に症状が現れ、その後、反対側の目にも同様の症状が現れます。そのほか、吐き気、嘔吐、食欲低下、下痢などの症状は3~5日間ほど続くことがあります。 プール熱は、経過がよいことがほとんどですが、耳や鼻へのウイルスの侵入によって中耳炎や副鼻腔炎を起こしたり、まれに肺炎などを起こして重症化することもあるので軽視できません。 目の症状が重たい場合は眼科での受診、ぐったりしている、反応が鈍い、言動が意味不明、などの症状が現れた場合も医療機関で早めに受診するようにしましょう(眼に後遺症が残る事例は少ないです)。 プール熱の診断方法 プール熱の主な検査には、「迅速診断キット」を使った検査方法があります(症状・流行状況によって、問診により診断されるケースも)。 <迅速診断キット> 喉などを綿棒でこすって「咽頭ぬぐい液」を採取、アデノウイルスが含まれているかを調べます。結果がでるまで15~30分程度とカンタンな検査です。ただし、陽性の場合はアデノウイルスに間違いありませんが、感染による発熱から間もないタイミングなどには陰性になってしまう場合も。 プール熱の治療方法 残念ながら、プール熱にはワクチンや特効薬などがありません。高熱に対しては解熱剤、喉の痛みには抗炎症剤、目の症状には抗生剤やステロイドの点眼薬などの眼科治療、症状を和らげる対症療法となります。 高熱に加えて、喉の痛み・腫れから飲食が困難な場合がありますが、脱水症状にならないよう水分補給が大切です。飲みものは、麦茶、牛乳など刺激の少ないものを選びましょう。食べものも同様に、刺激が少なくのどごしの良いプリン、ゼリー、おじや(冷ましたもの)、お豆腐、冷製スープなどがオススメです。 プール熱の予防対策 主な治療薬のないプール熱は、予防が大切です。 アデノウイルスは、アルコール消毒剤や熱に対する抵抗力が高いウイルスです(「ノンエンベロープウイルス」といいます)。そのため予防策には、手洗い、うがい、マスク等の一般的な感染症対策が有効とされています。特に注意したいのは、タオルの共用。家庭内での感染事例も多くみられます。体調がよくないときは免疫力が低下していることも多いので、プールは避けましょう。 ・プールや温泉施設の利用前後にはシャワーを浴びる・帰宅時に石鹸・ハンドソープなどで丁寧に手を洗う・タオル等は共有せず、個別に使用する なお、昭和の時代には、プールの後に眼を洗う(「洗眼」といいます)ことが推奨されていましたが(小学校などでは、専用の蛇口が設けられていたケースも)、水道水による洗眼は保護層が洗い流され角膜が傷つきやすくなるとして、現在では推奨されていません。 プール熱の学校保健法上の取扱い 集団感染を防ぐ目的で制定された学校保健安全法施行規則では、第二種学校感染症(飛沫感染、接触感染により伝播され、学校内で流行を広げる可能性が高いものが分類されています。インフルエンザや麻疹などもこの分類)に位置付けられ、結膜炎やのどの炎症などの主要症状がなくなってから2日間は出席停止となっています。ただし、病状により伝染の恐れがないと医師が判断した場合には、登校することができます。 プール熱は、5歳以下の患者が6割を占めますが、大人でもかかることがありますので、家族など身近な子どもがかかったときには用心しましょう。大人がプール熱にかかった場合は、子どもとは異なり、仕事などを強制的に休まなければならないといった制限はありませんが、周囲へ感染可能性も考慮し、症状がなくなるまでは自宅で安静に過ごしましょう。 さいごに 今回は、子どもの三大夏風邪のひとつプール熱を取り上げました。 プール熱は、重症化するケースは稀とはいえ、感染力が強く、新生児にとっては大きな脅威となる感染症。日頃からの体調管理や基本的な感染症対策を徹底し、感染防止に努めたいものです。感染症対策について、ご不明な点などがございましたら、お気軽に当社までお問い合わせください。(監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 参照URL 咽頭結膜熱とは(NIID 国立感染症研究所)咽頭結膜炎にきをつけよう!(神奈川県衛生研究所)アデノウイルス感染症とは(大阪健康安全基盤研究所) 「delfino施設まるごと抗菌」とは 感染症対策製品「delfino(デルフィーノ)」は、「感染ゼロをめざして」というコンセプトのもと、光触媒(酸化チタン)、抗菌触媒(銀)、三元触媒(プラチナ)などの触媒を組み合わせることで、それぞれの触媒反応が持つ効果を相乗的に発揮させながら、それぞれの弱点を補うという発想の抗ウイルス・抗菌・防臭剤です。 専用噴霧器によって、デルフィーノをμ(ミクロン)単位の粒子で噴霧、密閉空間に充満させていくことで、壁面だけでなく、カウンター、チェア、デスク、キャビネットなどのあらゆるものを抗ウイルス・抗菌コーティングして、施設内での感染リスクを軽減します。お問い合わせは以下のリンクから。 お問い合わせ
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乳児にご注意。RSウイルス感染症とは
2023年夏シーズン、子どもの間でいくつかの感染症が流行しています。 国立感染症研究所からの第29週の公表データによると、過去5年間の平均値と比較して上回っているのが、インフルエンザ、ヘルパンギーナ、咽頭結膜炎、RSウイルス感染症、急性出血性結膜炎、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の6つです。 定点把握の対象となる5類感染症(国立感染症研究所) 今回のコラムで取り上げるのは、乳児にとって大きな脅威となるケースもある、RSウイルス感染症。いつものように、感染症・疫学の権威である防衛医科大学校の加來先生に監修いただきながら、分かり易く整理して情報をお届けしていきたいと思います。 RSウイルス感染症は、2歳以上の人にとっては大きな脅威とはなりにくい感染症ですが、乳児にとってはまったく違います。ご自身や、周りの方々の安心・安全をまもるために、ぜひこの機会に正しい知識を身に付けてください。 RSウイルス感染症とは RSウイルス感染症とは、RSウイルス(Respiratory syncytial virus(レスピラトリー・シンシチアル・ウイルス)による急性呼吸器感染症をいいます。1956年に上気道炎症状を呈するチンパンジーから最初に発見された疾患で、発見当初は9月頃~冬~初春までが流行期と考えられていましたが、2021年以降、春から初夏にかけて継続した増加がみられ、夏にピークを迎えています。 電子顕微鏡でみるRSウイルス(Wikipedia PublicDomain) 感染すると、年齢を問わず風邪などの症状を引き起こしますが、乳児期(なかでも生後1歳まで)の発症例が多く、母体からの移行抗体をもつ生後数週から6か月未満の間にもっとも重症な症状を引き起こします。低出生体重児(2,500グラム未満)や、心肺系に基礎疾患があったり、免疫不全のある場合には、さらに重症化リスクが高まることが知られています。 生後1歳までに50〜70%が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染します。2歳以上で感染した場合、軽い鼻風邪程度で済むことが多く、重症化リスクは軽減します。RSウイルスは、かぜのウイルスの一種なので、大人から子どもまで何回も感染するのも大きな特徴。年長児や大人に感染すると鼻の症状だけ引き起こすことも多いウイルスです。 高齢者の場合、RSウイルスが重症の下気道炎を引き起こす原因となることが知られ、特に介護施設内などでの集団発生が問題となる場合があります。 RSウイルス感染症の症状は RSウイルス感染症の特徴的な症状は、細気管支炎、肺炎です。 感染経路は、飛沫感染、接触感染です。感染者の咳・鼻水を浴びることや、それらに直接触れることで感染します。感染後、4〜5日の潜伏期を経て、咳、鼻水、発熱などが症状として現れます。発症後、10〜14日間ほどでウイルスは排出されますが、1か月程かかる場合も。 「呼吸が苦しそう」「食事や水分摂取ができない」などの場合には、医療機関への受診を検討してみてください。特に前者の症状では、RSウイルスによって肺炎、気管支炎、細気管支炎などが引き起こされている可能性があります。場合によっては酸素投与、点滴などの処置が必要であり、入院し経過観察が必要な場合もあります。 生後3か月未満の乳児では、これらの症状の代わりに、哺乳不良、活気不良、無呼吸発作、チアノーゼ(皮膚の色が紫色になる状態)などの症状が現れるケースもあります。特に、無呼吸発作は命にかかわる重篤な症状なので、要注意です。 RSウイルス感染症の疑いがあったときは 病院で行なうRSウイルス感染症の検査は、鼻腔に専用の綿棒を挿入して鼻粘膜をぬぐい検体を採取、15分程度で診断することができます。しかし、生後間もない(1~2か月程度)乳児でRSウイルス感染症が疑われる場合には、経過中に無呼吸発作などの症状が現れるリスクもあるため、重症化する経過を予想し、入院するケースもあります。 RSウイルスには、有効な抗ウイルス剤がないため、症状に合わせた対症療法が一般的です。去痰薬、解熱薬、理学療法(痰を出しやすくしたりする体位を取らせたり、吸入をしたりするもの)など、罹患者自身の免疫力により回復を助ける薬を内服したり、吸入などの処置で呼吸状態を改善する処置が取られます。重症化した場合には、酸素投与、補液(点滴)、呼吸管理が行なわれます。 ※重症化リスクの高い在胎36週未満の早産の乳児、および慢性肺疾患や先天性心疾患をお持ちの乳幼児を対象に、重症化抑制薬(抗RSウイルスモノクローナル抗体:商品名シナジス)を予防投与することが認められています。 RSウイルス感染症へ予防対策は、日常の手洗い、うがい、マスク着用です。また、子どもが日常的に触れる玩具などをこまめに消毒するのも大切です。 さいごに RSウイルスは、乳児以外では重症化リスクが高くはないために軽視されがちです。しかし、症状が重くないからといって、自分自身がキャリアとなって乳児にうつしてしまう可能性も。特にご家族など近い距離に乳児がいる場合には要注意です。 RSウイルス感染症は、ほかの感染症と同様、正しい知識を持ちリスクの程度を把握、ひとりひとりの意識によって感染拡大を防いでいきましょう。(監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 参照URL・RSウイルスとは(NIID 国立感染症研究所)・IDWR感染症週報(厚生労働省/国立感染症研究所) 「delfino施設まるごと抗菌」とは 感染症対策製品「delfino(デルフィーノ)」は、「感染ゼロをめざして」というコンセプトのもと、光触媒(酸化チタン)、抗菌触媒(銀)、三元触媒(プラチナ)などの触媒を組み合わせることで、それぞれの触媒反応が持つ効果を相乗的に発揮させながら、それぞれの弱点を補うという発想の抗ウイルス・抗菌・防臭剤です。 専用噴霧器によって、デルフィーノをμ(ミクロン)単位の粒子で噴霧、密閉空間に充満させていくことで、壁面だけでなく、カウンター、チェア、デスク、キャビネットなどのあらゆるものを抗ウイルス・抗菌コーティングして、施設内での感染リスクを軽減します。お問い合わせは以下のリンクから。 お問い合わせ
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2023年夏、猛威を奮うヘルパンギーナを紐解く
2023年5月8日より新型コロナウイルスのあつかいが「5類」に引き下げられ、コロナ禍で自粛されていた様々な活動がコロナ前の状況に戻りつつあるなか、子どもに流行し易い複数の感染症が例年よりも猛威を奮っています。 もともと夏季には、子どもを中心に「手足口病」、「ヘルパンギーナ」、「咽頭結膜炎(プール熱)」の「三大夏風邪」と呼ばれる感染症が例年流行しますが、国立感染症研究所の発表によると、2023年はそれらのなかでもヘルパンギーナが特に感染者数を拡大しているといいます。 今回のコラムでも、感染症の権威である防衛医科大学校の加來先生に監修いただきながら、分かり易く情報をお届けしたいと思います。 ヘルパンギーナは子どもを中心に流行するとはいえ、大人が罹患した場合に症状が重くなる可能性も。ご自身や、周りの方々の安心・安全をまもるために、ぜひ最後までお付き合いください。 ヘルパンギーナ 2023夏 夏季に子どもの間で流行する感染症はいくつかありますが、2023年夏シーズンでは、以下の5つの感染症が特に流行しています。 ・ヘルパンギーナ…高熱、のどの痛み、口内に口内炎のような水ぶくれなど ・RSウイルス感染症…主にせきからなるかぜ症状(重症化すると、細気管支炎や肺炎も) ・感染性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルスなど)…吐き気・おう吐、腹痛、発熱 ・咽頭結膜炎(プール熱)…発熱、のどの痛み、結膜炎など ・A群溶血性レンサ球菌咽頭炎…高熱、のどの赤み、イチゴ舌(免疫がないと発疹が全身に広がるケースも) これらのなかで、もっとも警戒すべき罹患者数なのが、ヘルパンギーナ。すでに大阪府では、府内における定点観測の結果、定点あたりの1週間(6月12日~6月18日)に報告された患者報告数が警報レベルを超えて、大きな流行になっていると発表されています。 ヘルパンギーナとは 画像引用:エンテロウイルス(東京都健康安全研究センター) 最初に、ヘルパンギーナとはどのような感染症なのかを整理していきます。 ヘルパンギーナ(Herpangina)の語源は、ドイツ語の「水疱(ヘルペス)」と「喉の炎症(アンギーナ)」から成ります。夏かぜの代表的疾患で、乳幼児を中心に夏季に流行する急性のウイルス性咽頭炎です。発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹が特徴で、罹患者の年齢は、5歳以下が全体の90%以上を占めます。 日本国内では、例年5月頃より増加し始め、7月頃にかけてピークを形成、8月頃から減少を始め、9~10月にかけてほとんど見られなくなり、流行は例年西から東へと推移していきます。 ヘルパンギーナの流行規模は、ほぼ毎年同様の傾向を示していましたが、2023年にはだいぶ違った様相を呈しているのです。以下のグラフは、国立感染症研究所が開示している流行状況を示す定点観測データです。 ヘルパンギーナの流行状況(25週目データ)(国立感染症研究所) コロナ禍の真っ只中である2020年~2021年シーズンでは、新型コロナウイルス感染症予防のためのあらゆる措置が取られている影響もあり、他の感染症同様に例年より低い数値を示しています。しかし、コロナ禍前の2019年と、2023年の数値の差異を参照すると、その差は歴然(24週目の数値では、10倍以上の差異が見て取れます)。今シーズンの流行の大きさがよく分かります。 ヘルパンギーナの感染源の大多数は「エンテロウイルス属」に属するウイルスに起因します。エンテロウイルス属の宿主はヒトのみで、感染経路は、 ・飛沫感染…ヘルパンギーナ罹患者の咳、くしゃみなどに含まれるウイルス ・接触感染を含む糞口感染…水疱の内容物や便に排出されたウイルスが手などを介し、粘膜から感染 これらの2つです。急性期にもっともウイルスが排泄され感染力が強く、エンテロウイルスの特徴として、病状の回復後にも2~4週間と長期にわたって便からウイルスが検出されることがあるため注意が必要です。 ヘルパンギーナの症状 画像引用:Herpangina Virus(Wikipedia PublicDomain) ヘルパンギーナの潜伏期間は、3〜6日。39℃以上の熱が1〜3日つづくと同時に、のどが赤く腫れて、小さな水疱がたくさん出現します。水疱は2〜3日で破れ、黄色い潰瘍になります。 のどの痛みが強いのが大きな特徴なので、食事や飲みものの摂取が困難になることから、脱水症状を起こしたり、高熱から「熱性けいれん」を起こすこともあります(まれに、髄膜炎や心筋炎が生じることも)。発熱は2~4日程度で解熱し、そのあと粘膜疹も消失します。 ヘルパンギーナは、学校で予防すべき伝染病に含まれていません。 症状が回復してからもウイルスは長期にわたって排泄されることがあるため、急性期だけ登校・登園停止の措置をとったとしても、感染拡大抑止効果があまり期待できないためです。 ヘルパンギーナの予防・治療方法は 残念ながら、ヘルパンギーナには予防接種や特効薬がありません。 予防策は、せっけんを用いた手洗いの徹底、うがい、空気の入れ替えが効果的です。周囲に咳やくしゃみをする人がいる場合には、「うつさない・うつらない」ためのマスクの着用も効果的です。なお、ヘルパンギーナや咽頭結膜熱、感染性胃腸炎のウイルスは、アルコール消毒が効きません。 対処療法として、口内炎の痛みを鎮痛解熱薬で和らげたり、粘膜保護剤の軟膏などが処方されることがあります。脱水症状の治療が必要な場合もあります。 飲食については、のどに痛みがあるので、柑橘系のジュースや熱いスープなどの刺激はできるだけ避けます。飲み物は牛乳や麦茶など、スープは冷たいスープが理想的です。食べ物も、のどに対する刺激のなるべく少ないものを意識してください。 さいごに 今夏は、コロナ禍のさまざまな制約から解放された、久しぶりの夏休みが訪れます。昨年よりも、楽しみにしているお子さんが多いに違いありません。 ヘルパンギーナには、予防接種も特効薬もありません。感染抑止に重要なのは、日頃から手洗いやうがいなどの感染予防の取り組みと、感染状況に関するアンテナを高くすることです。これは、周囲のコミュニティのなかでの流行状況だけでなく、身近な家族内の互いの体調の変化を察知することです。 新型コロナで学んだ教訓を生かしながら、存分に夏を満喫し、良い思い出のたくさんできる夏をお過ごしください! (監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 参照URL ・エンテロウイルス(東京都健康安全研究センター) ・ヘルパンギーナの流行状況(国立感染症研究所) delfino施設まるごと抗菌 感染症対策製品「delfino(デルフィーノ)」は、「感染ゼロをめざして」というコンセプトのもと、光触媒(酸化チタン)、抗菌触媒(銀)、三元触媒(プラチナ)などの触媒を組み合わせることで、それぞれの触媒反応が持つ効果を相乗的に発揮させながら、それぞれの弱点を補うという発想の抗ウイルス・抗菌・防臭剤です。 専用噴霧器によって、デルフィーノをμ(ミクロン)単位の粒子で噴霧、密閉空間に充満させていくことで、壁面だけでなく、カウンター、チェア、デスク、キャビネットなどのあらゆるものを抗ウイルス・抗菌コーティングして、施設内での感染リスクを軽減します。お問い合わせは以下のリンクから。 お問い合わせ
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新型コロナ 感染症法の類型「5類」へ
2020年の新型コロナウイルスの発生から3年余りが経ち、ようやく世の中が本格的に通常モードへと戻ってきました。街にはマスクを外した人や、外国人の姿も多く見かけるようになりました。政府方針は、2023年1月27日の新型コロナウイルス感染症対策本部において感染症法の位置付けの変更が正式に発表され、感染法上の分類を2023年5月8日から、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられました。このことは、新型コロナウイルスの変異の影響も大きいと思われますが、 ワクチンが開発され感染しても重症化率が減少した簡便に検査で早期発見を行えるようになった三密を避けることが感染リスクの軽減につながることの理解が深まった これらのことにより、経済活動を優先させる時期が到来したと政府が判断を下したと捉えることができます。この「5類」移行により、感染者の自粛期間や大規模イベント開催、医療費の負担、マスク着用や医療機関への受診など、これまでと大きく変わります。それでは、具体的にどのように変わるのかについて、今号も防衛医科大学校の加來先生に監修いただきながらお伝えしていきたいと思います。 感染症法の類型とは 感染症法上の「類型」とは、感染症を予防し地域での流行を抑えていくだけでなく、患者さんに対して適切な医療を提供していくために、感染の広がりやすさや症状の重症度など危険度に応じて、疾病を5段階に分類したものを指します。もっとも感染性と重篤度が高い1類を筆頭に、1~5類までの5段階と、既知の病原体によるものとして新型インフルエンザ等感染症と指定感染症が、未知の病原体によるものとして新感染症に分類されています。これらの類型に応じて法律で可能な措置も変わります。 クリックで拡大できます 類型「2類相当」から「5類」への移行 新型コロナウイルス感染症は、発生当初は指定感染症(2類感染症相当)に、その後は新型インフルエンザ等感染症(2類感染症)といった具合に、いずれも2類感染症相当と分類されていました。したがって、無症状の感染者も含めて、感染者に対する入院勧告や就業制限、外出自粛要請、健康状態の報告などを求める措置が可能となっていたのです。そして、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づき、政府や都道府県に新型コロナウイルス感染症対策本部が設置されました。そして、数回に渡って緊急事態宣言の発出や、まん延防止等重点措置が取られ、飲食店への休業、営業時間の短縮要請などが出されました。今回の5類への引き下げにともない、政府や都道府県の対策本部は廃止、政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」も廃止になりました。感染者への入院勧告や濃厚接触者の外出制限、飲食店に対する時短営業要請や水際対策も原則的に無くなるなど、法律に基づいて政府や都道府県などが取る措置も変わりました。 新型インフルエンザ等感染症(2類相当)と5類感染症の主な違い(厚生労働省資料より)クリックで拡大できます 一方で、医療体制に関する政府方針は、段階的に移行させるとしています。将来的には、自治体の指定を受けた「発熱外来」のある医療機関だけではなく、季節性インフルエンザなど他の5類感染症と同じようにどの医療機関でも診療できるようになります(ただし、各医療機関の判断に委ねられます)。受診時の医療負担は1~3割の自己負担が生じます。ワクチン接種については、令和5年度中は全額公費負担で接種可能ですが、将来的には自己負担が生じる見通しと報じられていますのでご注意ください。 個人や事業者はどうするべき? 感染症対策は政府や自治体のみが一律に対応を求め実施させるのではなく、個人や事業者みずからがその意義を理解して、より効率的で効果的な感染対策を取り組んでいくかが重要です。個人や事業者それぞれの判断に委ねられたときこそ、基本的な感染症対策である手洗いの徹底や、混雑した電車内などでのマスクの着用など、この3年半の経験から学んだ教訓を忘れずに、冷静な行動を選択していただきたいと思います。(監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 「delfino施設まるごと抗菌」とは 感染症対策製品「delfino(デルフィーノ)」は、「感染ゼロをめざして」というコンセプトのもと、光触媒(酸化チタン)、抗菌触媒(銀)、三元触媒(プラチナ)などの触媒を組み合わせることで、それぞれの触媒反応が持つ効果を相乗的に発揮させながら、それぞれの弱点を補うという発想の抗ウイルス・抗菌・防臭剤です。専用噴霧器によって、デルフィーノをμ(ミクロン)単位の粒子で噴霧、密閉空間に充満させていくことで、壁面だけでなく、カウンター、チェア、デスク、キャビネットなどのあらゆるものを抗ウイルス・抗菌コーティングして、施設内での感染リスクを軽減します。お問い合わせは以下のリンクから。 お問い合わせ 参照URL 論点毎の考え方(厚生労働省)新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について
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感染症の成立する三要素とは
新型コロナウイルスに関する諸々の規制が、徐々に緩和されつつあります。療養解除基準の緩和や、屋外でのマスク着用の原則不要化、イベントの開催制限も一定条件下で収容人数の100%の入場ができるように。2023年5月8日には、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針が決定されました。新型コロナウイルスは、国内死亡者数は少ないものの、伝播力はまだまだ健在。そして、どこまで変異していくのかはまだまだ未知数です。そういった状況下で、自分自身や周りの大切なヒトを守るためには、より一層の自助努力・自己防衛が求められます。 感染症が「ウイルスや細菌が身体に侵入して悪さをすることで引き起こされる」ということは、もはや周知の事実ですが、それらが身体に侵入する手順や、感染症が引き起こされる条件について、正しく理解できているでしょうか。今回は、感染症成立の三要素と、その予防策について、防衛医科大学校の加來先生にご指南いただきながら、丁寧に紐解いていきたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。 感染症の成立する三要素 ヒトをはじめとした動物は、太古より微生物とともに生きてきました。ヒトの体内のあらゆる器官には、何億、何兆という微生物の存在によって、健康状態が保たれています(この体内の微生物を「常在微生物(常在菌)」といいます)。もちろん、水や空気などの自然界にも、微生物が存在しています。一方、何らかの手段によってヒトの体内に侵入し、病気を引き起こす微生物を「病原微生物(=病原体)」といいます。その病原体が、体内で増殖するのが「感染」。身体のある部分が痛んだり、腫れたり、発熱したりと、何らかの症状をある状態を「感染症」と呼びます。現在は、テクノロジーの発達によって感染症は病原体によって引き起こされる疾患であり、治療できるものと分かってきていますが、以前は大きく事情が異なっていました。感染症は、「突然発病する」、「一気に感染拡大する」などの特徴から、「天罰だ」、「悪い血筋に起因している」などと考えられ、誹謗中傷、差別や偏見を生みました。世界中で、感染者本人やそのご家族などを精神的にも追い詰めてしまった悲しい事例は枚挙に暇がありません。また、差別や偏見によって、感染したことを言い出しにくい雰囲気は、感染者本人の重症化・蔓延に繋がるだけでなく、感染症の実態把握の大きな妨げになり、感染拡大を加速させます。感染症は、正しく情報を把握して、正しく恐れなければならないのです。感染症を理解するためには、次の三要素に分けて考えると正しく理解することができます。① 病原体の特徴(感染源)② さまざまな感染経路③ 多様な免疫状態の宿主(感染先)それでは、ひとつひとつ整理していきましょう。① 病原体の特徴 最初に、感染症を引き起こす病原体について整理します。病原体には、細菌、ウイルス、真菌、リケッチア、寄生虫などがあります。これらは、水や土壌などの環境中、哺乳動物・昆虫に存在することがありますが、感染者の排泄物・分泌物にも存在します。これらの病原微生物の特徴について、表1にまとめました。 表をクリックで拡大できます 感染源対策は、感染源の撲滅。感染源の消毒・除去(汚物処理、適切な消毒と環境整備、空気清浄機、換気など)のほか、患者の咳エチケット(マスクの着用や、咳やくしゃみをするときに手や衣類で覆うなど)、感染患者の個室管理などがあります。感染患者の早期発見・早期治療も広い意味での感染源対策といえます。② さまざまな感染経路 次に、感染経路について。感染症は、病原体が何らかの手段・ルートを辿ってヒトの身体に侵入することで引き起こされる疾患です。この手段・ルートのことを「感染経路」といいます。病原体は、感染経路を通じて広がっていきますが、その広がりかたは「垂直感染」と「水平感染」の2つに分けることができます。 ・垂直感染:母親から子に垂直に直接的に感染するもので、妊娠中の胎盤感染、出産時の産道感染、出生後の母乳感染が含まれます(「母子感染」とも)。・水平感染:ヒトや動物などで、同種の親子関係にない個体間、あるいは異種個体間で感染すること。接触感染、飛沫感染、空気感染、媒介物感染の4つに分類することができます。それぞれの特徴は、以下の表2のとおり。 表をクリックで拡大できます 接触感染には、ヒトや動物、土壌や水との直接的・間接的な接触によるものや、性感染症も含まれます。そのほか、針刺し・切創事故や、汚染された点滴や輸血によるもの等の医療行為に関連する「医原性感染」と呼ばれるものも。感染経路対策は、病原体が判明している場合は、その病原体の特徴に応じた対策(飛沫感染防止策、空気感染防止策、接触感染防止策)を随時検討しましょう。そのほか、衛生動物や害虫の駆除、有事の際には安全な飲料水・食品の確保が重要です。③ 多様な免疫状態の宿主 ウイルスなどの病原体にさらされることを「曝露(ばくろ)」といいます。病原体に曝露されたとき、感染しやすいかどうかは過去の感染の既往やワクチン接種歴、そのときの免疫状態によっても異なります。感染する人のことを「感受性宿主」といいます。体力自慢の健康なヒトであっても、ある病原体に初めて曝露されると、感染が成立し発病に至ることがあります。また、妊娠中のヒトの免疫力が低下するのは、胎児を異物とみなして排除しないようにするため。胎児は、胎盤を通じて母親からの免疫の移行を受け、その免疫によって守られています。乳幼児は、1歳までに母親からの移行免疫が切れ、自らの免疫が作動し始める不安定な時期です(麻疹ワクチンを1歳経過後に接種するのはそのためです)。高齢者は、長い年月のなかで感染症の罹患歴を多数有し、免疫力が高いケースも多いですが、基礎疾患などによって免疫機能が低下、感染し易い状態になっている場合があります(このようなケースを「易感染性宿主」といいます)。宿主対策としては、自然免疫力の低下を防ぐため、十分な栄養、睡眠、休養をとること大切。また、ワクチン接種や予防薬の内服なども有効な手段です。 エアロゾル感染・サージカルマスクについて 「新型コロナウイルス対策として、『エアロゾル感染』に注意しなければならない」という表現を聞いたことはありませんか。この表現について、東京大学保健センターの発信を引用してご紹介します。 エアロゾルとは、気体中に液体ないしは固体の微粒子が広がった状態を指していて、ほこりや花粉、霧などが含まれます。微粒子の大きさは数nmから100μm程度まで様々です。エアロゾル感染というのは、このような空気中をただよう微粒子内に病原体が含まれていて、この微粒子を介して感染することを指しており、感染経路として「飛沫感染」と「飛沫核感染」を包含している用語です。この2つの感染経路は、名前は似ていますが、対策方法が大きく異なります。なお、「エアロゾル感染」という言葉は文脈により飛沫感染のことしか指していない場合や飛沫核感染のことを指しているもあり、解釈には注意が必要です。(引用:東京大学保健センター) このように、エアロゾルは曖昧。新型コロナウイルスのような、全貌が掴めていないウイルスの説明時に用いられる傾向にありそうです。対策は、飛沫感染対策と飛沫核感染対策で大きく異なるため、正しい状況把握が必要というわけですね。 また、サージカルマスクについても少し解説しておきます。「サージカル(surgical)」の意味は、「外科的」、「手術の」などの意味。不織布製のものが多く、一般的な家庭用よりもフィルターの目が細かいとされますが、じつは日本国内では細かい定義はありません(欧米では一定の基準がある国も)。マスクは、自分自身が感染しないためではなく、他者に対してウイルスをまき散らさないために装着するものという考えが広く知られるようになりましたが、サージカルマスクは、飛沫感染防止のために効果的といえます。行政の推奨によらずとも、状況に応じて着用を検討してみてください。なお、結核など空気感染の可能性がある感染者を対応する場合には、よりフィルターの目が細かい「N95マスク」などを着用します。定義はかなり専門的になるため割愛しますが、フィルターの目が細かいため呼吸がしにくく、日常使いには不向きと言えそうです。 おわりに 今回は、感染症成立の三要素について整理してきました。さいごに、それらをカンタンにまとめた表を掲載しておきますのでおさらいしましょう。 表をクリックで拡大できます 以上のように、感染症対策は、感染源対策、感染経路対策、宿主対策の3つのうち、できるところを確実に実施していくことが大変重要です。ご参考になれば幸いです。デルフィーノケア社では、感染症対策に関する様々なソリューションを展開しています。感染症予防策のご提案や感染症相談窓口のご提供も行なっていますので、どうぞお気軽にご相談ください。 皆さんの日常が、感染症の脅威に晒されませんように。(監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 参照URL ・屋外・屋内/子どものマスクの着用について(厚生労働省)・感染の方法(東京大学保健センター)
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新型コロナとインフルエンザの同時流行に備える
11月も下旬に差し掛かり、すっかり気温も下がってきました。もう冬支度は済まされましたか。さて、日本国内では、スポーツや音楽コンサートなど、各種の大型イベントの規制緩和や、入出国における水際対策が緩和されました。その影響か、11月に入って新型コロナウイルスの感染者数は増加傾向に。札幌市では過去最多を更新したという情報もあり、「とうとう第8波の到来か」という声も聞こえてきています。さらに、マスクの着用や外出自粛など、新型コロナ対策によって抑えられていたインフルエンザが、今シーズンは急増するのではないかとの懸念も。インフルエンザと新型コロナ、その感染力も強く重症化リスクのある2つの感染症は脅威ですが、さらに、最大のリスクとして「同時感染」の可能性も…。経済活動が活発になり始め、少しずつ上向く兆しが見え始めているなか、少しでも余計な不安を取り除いておきたいものです。そこで、今回のコラムでは、その「新型コロナとインフルエンザの同時流行」について、感染症の権威である防衛医科大学校の加來教授にお聴きしながら整理していきたいと思います。ご自身と、周りの方々を守るためには、まずは正しい情報収集が肝。ぜひご一読ください。 コロナ禍以降のインフルエンザの流行状況は 新型コロナウイルスの全世界的な感染爆発によって、すっかり影を潜めていた感のあるインフルエンザ。実際の国内の感染者数はどうだったのでしょうか。厚生労働省が2020年、2021年の患者数を公表しています。 2020年、2021年ともインフルエンザ患者報告数は前年を大きく下回っていることが分かります。やはり、「新型コロナへの対策が、インフルエンザ予防にも効力を発揮した」と考えて問題なさそうです。その新型コロナへの対策には、大きく分けて2つの方法がありました。 ・個人が意識的に行なう対策→マスクの着用や手洗いの徹底、三密の回避など・国や地方自治体などからの要請によって行なう対策→国や地方自治体が発令する緊急事態宣言や、国際間の往来の規制など 後者については、新型コロナウイルスの初期から昨年にかけては4回の緊急事態宣言が発令、また、全期間を通して不要不急の外出自粛が要請されました(※自治体による差異があります)。さらに、海外渡航には関しては、より厳しい制限がありました。直近2年間の入出国者数を、出入国在留管理庁が公表しています。 直近の2年間と今シーズンでは、「国や地方自治体などからの要請によって行なう対策」に関して大きな差異があります。つまり、一人ひとりの意識・モラルに基づいた感染予防策が今シーズンは大切だということです。 防衛医科大学校 加來教授に聴く 2022年を健康に乗り切っていただくための新型コロナとインフルエンザに関する知識・備えなどについて、防衛医科大学校の加來教授へのインタビューさせていただきました。今回のインタビューに先立ち、新型コロナウイルスとインフルエンザに関する質問・不明点をSNSなどで募集したところ、集まった質問・不明点のうち、票の多かったものがこちらです。 ・新型コロナとインフルエンザ、どちらをより警戒するべきなのか・新型コロナとインフルエンザのワクチン、同時感染はあり得るかどうか・新型コロナはインフルエンザに有効なのかどうか・インフルエンザワクチンに副反応はないのかどうか・新型コロナのワクチンの同時接種は可能なのかどうか・新型コロナとインフルエンザ、両方の予防策はあるのかどうか これらの6つの質問・不明点について、加來先生にお聴きします。加來先生インタビュー —— はじめに、まず新型コロナとインフルエンザ、より警戒するべきなのはどちらでしょうかもう皆さんもお気づきだと思いますが、2つの感染症とも様々なケースがあるので断言は難しいですが、忘れていけないのは両者ともに局所の感染症ではなくて、全身感染症であるということです。したがって、基礎疾患をお持ちの方が重症化するリスクは両者ともに高いのです。新型コロナウイルス感染症は、これからも変異を繰り返していくでしょうから、症状も後遺症も大きく変わってくることが予測されます。しかしながら、一番気になるのは、やはり致死率です。新型コロナ対策を検討する専門家グループの調査報告では、「オミクロン株の感染者に占める死亡者の割合(致死率)は、今年1月以降の暫定値で約0.13%と、複数の方法によって推計した季節性インフルエンザの致死率0.006~0.09%を大きく上回っている」という結果でした。 —— 新型コロナとインフルエンザ、これらの感染症に同時に感染することはあり得るのでしょうか同時にかかることがあります。欧州では既に同時感染の事例が報告されています。最近「新型コロナの症状は軽いから大丈夫」と高をくくって、予防しない人が増えているようですが、同時感染のリスクは警戒するべきです。先にどちらに罹患しても、基礎疾患を有するに人にとっては、持病の悪化や体力の消耗に繋がりますので、同時感染すると重症化のリスクが高まるし、その間は二つのウイルスを周辺に排出していることになります。 —— 新型コロナのワクチンを既に3回打っています。それでもインフルエンザには感染することはありますかそれぞれまったく別のウイルスによる感染症なので、新型コロナワクチンはインフルエンザには効果はありません。そもそも新型コロナワクチンもインフルエンザワクチンも、感染予防効果というよりは発症時の症状軽減効果(重症化予防)が期待されています。心配な方はイルエンザワクチン接種をお奨めします。 ——新型コロナワクチンの接種時、副反応で数日間寝込みました。それからワクチン接種に対して恐怖感がありますが、インフルエンザワクチンにも副反応があるのでしょうかインフルエンザワクチンは、一般に副反応が少ないとされています。10~20%の割合で、接種局所の赤み、腫れ、痛みが起こりますが、通常2~3日で消失します。過去に重い副反応の報告事例がありますが、それらはワクチン接種との因果関係が明らかになっていません。逆に接種してはならないのは、過去にインフルエンザワクチン接種により重症なアレルギー症状 (アナフィラキシー反応) を起こしたことがある人のみです。 —— 新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種しても大丈夫ですか新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは、同時接種が可能です。新型コロナワクチンと他のワクチンの接種間隔では、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチン以外のワクチンでは2週間が必要ですが、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンについてはその制限がありません。 —— 新型コロナとインフルエンザの両方の予防策はありますか?現在、大型イベントの開催や海外渡航など、新型コロナに対する様々な規制が緩和されています。そのため、新型コロナの感染拡大と、新型コロナの予防対策によって防止できていたインフルエンザも感染拡大の可能性があります。 WHO_COVID-19_Dashboard(2022/11/17) そうなった場合、新型コロナの第6波で経験したように医療機関に大勢の人が押し寄せたり、医療従事者が感染したりと、スムーズに診断が受けられない状況(医療ひっぱくの状態)が続く可能性があります。そのためにはやはり、自己防衛が重要だと考えています。新型コロナとインフルエンザは、別のウイルスですが、感染対策は同様です。 ・三密を避ける ・マスクの着用と咳エチケット ・口腔衛生(うがいなど) ・こまめな手洗い これらの基本的な予防策を徹底することが大切です。スポーツや音楽コンサートなどの大型イベントに参加する際には、運営側から発信される感染症対策をしっかり守り、参加者のお互いが気持ちよく楽しむことが重要だと思います。インフルエンザワクチン接種は、ご自身を守るという目的の他に、ご家族・ご友人への感染源とならないという目的があります。とくに身近にお年寄りや小さなお子様、基礎疾患をお持ちの方がおられる場合にはぜひ接種を検討してみてください。 —— ありがとうございました さいごに 今回は、新型コロナとインフルエンザの同時流行について、加來先生にインタビューさせていただきました。新型コロナとインフルエンザは日常生活に支障をきたす脅威ではありますが、日頃から基本的な感染症対策を行なっていれば、同時に抑止することができそうです。繰り返しになりますが、基本的な対策は、以下の4つ。 ・三密を避ける ・マスクの着用と咳エチケット ・口腔衛生(うがいなど) ・こまめな手洗いご自身と、周りの皆さんをまもるため、意識してみてください。また、個人の意識・モラルに担保しない事業者の行なう感染症対策には、当社の主力サービスであるこちらを。 delfino施設まるごと抗菌 最後までお読みいただきありがとうございました。 (監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 参考URL ・WHO Coronavirus (COVID-19) Dashboard・令和2年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について・令和3年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について
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疫学入門 ~ 防衛医科大 加來先生インタビュー ~
(本稿は、2022年6月のインタビューをもとに制作しています)過去に例を見ない拡大を見せ、2年以上経った現在もなお世界がその渦中にあるコロナ禍。その副産物として、感染症やウイルスについて世間の見識が深まり、また、除菌・抗菌について急速に意識が高まりました。同様に、注目されることが多くなった学問があります。それが、「疫学」。疫学とは…明確に規定された人間集団の中で出現する健康関連のいろいろな事象の頻度と分布およびそれらに影響を与える要因を明らかにして、健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるための科学 と定義付けられています。感染症の脅威から自分自身と周りの大切な人を守るためには、集団の中でどのような防御策を採ることができるのかを知っておきたいもの。それを判断するために、疫学の知識は非常に有用です。今回は、疫学について分かり易く整理してお伝えするべく、感染症対策をご専門にしておられる防衛医科大学校の加來先生にお話を伺ってきました。 —— 最近では海外からの入国者数を2万人/日に緩和されたり、屋外ではマスクは不要とされたりなど、一時期に比べて感染対策に変化が出てきているように見えます。一方で新たな変異株による置き換わりなのか感染者数が再び増加して第7波に移行したとも言われています。このようなときに改めてどのような点に注意すべきでしょうか WHO Coronavirus Dashboard 2022/07/15 変異株のせいなのか今年になってからの新型コロナは、感染しても肺炎や重篤な全身症状を起こすことは少なくなりました。しかし現行の国内法では、感染した場合は一定期間の隔離状態となるし、その濃厚接触者も健康観察のために行動制限を受けます。具体的には、楽しみにしていた旅行や観劇はもちろん、大切な就職の面接や学校の試験、ときには結婚式などの会に参加できなくなります。このように日常生活に大きな支障を来たすわけですから、罹患しないに越したことはありません。いまだから特にというよりも、従来通りの「基本的な対策」を徹底させることが大事ですね。 —— 「基本的な対策」とは、手洗い、マスクの着用、三密(密閉、密集、密接)の回避などですね。さいきん「いったいいつまでマスクを着けてないといけないのか?」というような議論もよく耳にします よく報道されていますね。しかし、「いつマスクを外すべきか」などの議論の前に、「マスクの意義」を理解するべきだと思います。例えば、無症状の人がつけるマスクはいったい何のためなのでしょうか。—— 誰かにウイルスをもらわないための予防でしょうか はい、半分正解です。病院やクリニックで働いている人は、目の前に新型コロナウイルスの感染者がいる可能性が高いので、飛沫感染対策(患者さんからの飛沫から守る)ためにマスクを装着します。しかし「自分が知らない間に無症状の感染者になっていて呼気にウイルスを排出させている可能性がある」という前提に立つとどうでしょう。市中では、なるべく自分の呼気(マイクロエアロゾル)の飛散を抑えるために、マスクが有用なのです。この場合のマスクは、他者への思いやりだと言えるのではないでしょうか。 —— マスクは他者への思いやり…。はっとさせられますね 感染症のイメージは、悲しいかな、昔も現代もあまり変わっていません。不安や恐怖が他者への偏見や差別を生みます。当初は決められた対策に従いますが、やがて不平や不満、さらに無視、無関心といった行動が表れていきます。コロナ禍のような新興感染症であればなおさらです。どうしても他者への配慮や思いやりの気持ちが失われがちです。 —— コロナ禍においても、たくさんの差別や偏見に関する報道がありましたね。医療従事者への差別など心苦しいものも多くありました 無用な差別や虐待の事例は、ハンセン病やHIVなど枚挙に暇がありません。繰り返されている無用な差別によって苦しむ人がいない社会のためには、感染症は正しく恐れなければなりません。 —— 正しく恐れるためには、正しい知識を身に付ける必要があると以前教えていただきました。そのためにも疫学に触れておくことは有益ですね 「疫学」とはどのような学問なのか 画像引用:Wikipediaジョン・スノー先生(パブリックドメイン) —— はじめに、「疫学」とはどのような学問なのかについて教えてください 「疫学」は、疾病を個人としてではなく集団として捉える学問です。その適用の範囲は、医学の域に留まらず、集団のなかで発生する様々な問題や事象を取り扱います。そして、頻度(有病割合、発生率)、分布(地理的、時間的)などの情報を整理し、リスクの範囲や程度を分析し、健康と疾病に影響を与える因子を研究します。感染症疫学では、事例の全体像を把握するために「時」「場所」「ヒト」の「疫学の3要素」を分析します(記述疫学)。そして導き出されたリスク因子と結果(感染)との関連性の強さを検討します(解析疫学)。この2つの疫学的検討から、予防医学へ応用させたり、公衆衛生に反映させたりすることを目標にしています。従来の疫学は感染症を主な研究対象としていましたが、その後、公害や事故などの人災、地震などの天災や、生活習慣病なども研究対象となっています。タバコと肺がんの疫学研究は有名ですので、皆さんもご存じの方がおられるかもしれません。—— コロナ禍では、まさに地域ごとの罹患者数やクラスター発生に際して、疫学の専門家による見立てが頻繁に報じられていました ある一定の期間(時)に、特定の地域・場所(場所)で、特定の集団・グループ(ヒト)において、通常予測されるよりも多くの事象発生することをアウトブレイクといいます。疫学では、前述のとおり「疫学の3要素」を重視しています。新型コロナでは「クラスター」という言葉をよく聞きますが、これは“群れ”とか“塊”という意味ですので、アウトブレイクと同義語と思ってください。クラスター発生の第一報が入ると、まずは真の初発者を検知するようにします。初めて報告された人が必ずしも真の初発者とは限らないからです。そこから潜伏期を遡って行動歴を調査し、感染曝露の機会を突き止めます。そしてその場に居合わせたヒトを掘り起こし、感染していないかどうかを確かめます。このようにして、次のクラスター発生を最小限にとどめるように努めるのです。—— 経済学でいうマーケティングのような役割を担っているのかもしれませんね。コロナ禍では、非常に大きな存在感を感じます コロナ禍初期に、新型コロナ対策感染症対策分科会の尾身先生が、「三密の回避」(三密=密閉、密集、密接)を推奨されていました。いまでも厚生労働省のホームページに掲載されていますが、これは日本のクラスター調査班による疫学調査の結果からで考案されたものです。その後WHOを経由して、Avoiding the Three Cs(closed spaces, crowded place, and close-contact settings)として全世界に広報されていきました。これは疫学による世界貢献といえますね。 —— 非常に大きな成果ですね! 疫学の歴史を紐解く —— 疫学の歴史的背景についても教えていただけますか 疫学の歴史を語るときに、現代疫学の父と呼ばれるジョン・スノー先生の功績を外すことはできません。スノー先生は、1854年にロンドンのソーホーで起きたコレラの大発生において、その原因を追跡し、疫学的調査と防疫活動を行ったことで事態収拾に向かわせた人物です。 —— どのくらいの規模の災害だったのでしょうか 1854年8月末、ロンドンのソーホー地区でコレラが発生しました。最初の3日間でブロードストリート周辺で127人の死者を出しました。9月10日までに500名が死亡、ソーホー地区全体の10%以上の死亡率でした。 —— わずかの間に住民の10%以上が亡くなるとは恐ろしいですね 当時のロンドンは、人口の急激な増加に社会インフラの整備が追い付かず、悪臭の立ち込める街だったといいます。このような環境下でコレラは、イギリス侵入当時(1831年)から空気を伝わる悪臭(瘴気)によって感染すると考えられていましたが、スノー先生は疑問を呈していました。 —— 当初は「空気感染である」と信じられていたと。悪臭漂うなかでは、そう考えてしまう気持ちも分からなくもないですね スノー先生は患者を注意深く観察し、・初期症状は消化器系(激しい下痢、嘔吐)であること・人から人へ伝染していること・発病までに潜伏期間があること・同じ流行地でも患者の出る家が飛び飛びである などの特徴を掴みました。このように、観察し、記述していく研究方法を、現代の疫学用語では「記述疫学」といいます。 —— 実態を正確に把握するプロセスですね 患者発生マップと各水道会社の給水地域との比較照合を行い、特定の水道会社の給水地域においてコレラ患者が多発していることを突き止めます。このことから、コレラ特有の下痢便の中の伝染性生物(コンタギウム)が井戸水に入り、その汚染された水を飲んだ結果、コレラに感染したという「経口感染仮説」を立てます。そして、スノー先生による衛生局への直談判など、精力的な働きかけにより行政が問題の井戸を閉鎖したところ、流行の蔓延を防ぐ事が出来ました。 —— まさに、疫学的アプローチが解決に導いた事例ですね のちにオックスフォード大学の研究者は、「スノー先生の調査結果が麻酔の採用とロンドンの上下水道システムの根本的な変化を促し、他の都市でも同様の変化をもたらし、世界一般の公衆衛生の大幅な改善につながった」とも発表しています。 —— 現在も、同様の手法が研究されているのでしょうか 現在は、ジョン・スノー先生の疫学調査手法をさらに発展させた「実地疫学調査」が採用されています。記述疫学、仮説の設定までは同じ手法ですが、その次に、仮説で設定された危険因子が感染症の発症にどのくらい関連性があるかを検証していきます。これを「解析疫学」といいます。統計学的に有意であるかどうかを検証し、遡り調査を通じて原因を究明しています。 —— いよいよ統計学が登場するわけですね 疫学と統計学 —— 疫学で用いられる統計学について、分かり易く教えていただけますか 臨床医学では、「病原体がある感染経路によって発症」するという現象が重要です。一方で疫学では、「リスク因子への曝露によって感染が起こる」という現象に着目します。曝露というのは、問題となる因子に,特定の集団あるいは個人が晒されることです。「リスク因子に曝露された集団は感染しやすいが、曝露されなかった集団は感染しにくかった」という結果が得られた場合には「リスク因子は感染に関連がある」といえます。 引用:疫学調査を基にした院内感染症対策(加來先生著) 別の見方で、「感染している群のヒトは、感染していない群のヒトに比べて、リスク因子への曝露の程度が強い」ことが分かった場合には、「感染とリスク因子とには関連性がある」といえそうです。このように、感染症の疫学では、2つの集団を比較することでリスク因子への関連性の強さを算出します。 —— ひとつひとつの事象を注意深く検証していくのですね その関連性の強さが「統計学的に有意」であるかを検証します。「有意」とは、確率・統計学の用語で、「確率的に偶然であるとは考えにくく、意味があると考えられる」レベルであるかどうかを検証することです。偶然に起こるような稀な現象は5%くらいの確率で起こってもおかしくないと考えられています。ですから、得られた結果が95%の確率で起こっている現象は、偶然に起こったものとは考えにくい、すなわち「本当らしい」と考えるのです。これが「95%の信頼区間」や「5%の有意水準」の考え方です。感染症の疫学では2つの群を比較して検証していきますが、理解を深めるために、ハドリアヌス帝政の古代ギリシャ時代に遡り、哲学者エピクテトス(西暦50~135年頃)を紹介しましょう。—— 古代ギリシャの哲学者ですか! 哲学者エピクテトスに学ぶ 画像引用:Wikipediaエピクテトス(パブリックドメイン) エピクテトスは、ニーチェやパスカル、夏目漱石に至るまで、時代を超えて世界中の識者に影響を与えた人物として知られています。その彼の残した名言に、 「人は物事をではなく、それをどう見るかによって思いわずらうのである」「人間を不安にするのは物事そのものではなく、物事に対する見解が人間を不安にさせるのである」 というものがあります。これは、「実際にそうであること」と「そのように見えること」には乖離があると言っているわけです。これを表したのが以下の表1です。 現象の捉え方は、4象限に分けることができます。この表を「2×2表(Two by two table)」と呼びます。 「頭が良さそうにみえるが、実際に頭の良い人ではない」「貧しそうにみえるが、実際にはお金持ちである」 このようなことは決して珍しいことではありません。疫学において、事実を正しく見分けることができないと、その後の公衆衛生方針の意思決定をミスリードしかねません。この概念を、臨床医学における検査による診断(検査診断学)に当てはめてみると、表2のようになります。 a … 真の陽性(検査に陽性で、実際に病気である)b … 偽陽性 (検査は陽性であるが、実際には病気でない)c … 偽陰性 (検査では陰性であるが、実際には病気である)d … 真の陰性(検査で陰性であるし、実際に病気でない) —— 偽陽性などの単語は、昨今の感染状況に関する報道で耳にしたことのあるかたも多いかもしれませんね コロナ渦では多く登場している単語ですね。検査の信ぴょう性を判断する指標には、「感度」と「特異度」という単語が登場します。 —— PCR検査の感度についての記事を読んだことがあります 議論されていましたね。PCR検査は、感度70%程度、特異度99.9%程度と言われています。感度と特異度について説明していきましょう。 感度と特異度検査診断学でいう「感度」とは、「ある疾患を有する人において、検査で陽性と判断される割合(真の陽性率)」と定義されています。疾患「X」と分かっている患者100名にこの検査を行ない、95名が陽性だった場合、感度95%ということになります。 —— 表2の「a」にあたる割合ですね 一方で「特異度」とは、「健康な人において、検査で陰性と判断される割合(真の陰性率)」と定義されています。疾患「X」以外の患者100名に検査を行ない、3名が陽性であった場合、特異度97%ということになりますね。 —— こちらは「d」の割合ですね 感度が高い検査は、患者を正しく陽性と判断できる検査なので、言い換えれば偽陰性が少なくなる検査です。一方で、特異度の高い検査は、健康な人を患者と誤診することが少なくなります。 —— どちらも重要な指標ですね また、ある集団において病気を有する人が占める割合を「有病率」といいます。有病率は、ある一時点で、特定の疾患の全患者数を、その時点で当該疾患を患う可能性のある人の総数で割ったものです。例えば、1,000人に対して「Y」という検査を実施した場合を2×2表にしてみましょう。各指標は、以下の割合だったと仮定します。 被験者:1,000人有病率:10%感度 :70%特異度:99% 検査で陽性だった人の中で、実際に病気である人の割合を「陽性的中率」といいます。このケースでは、陽性者全体(79人)のうち、陽性且つ病気であるのは70人なので、「陽性的中率は89%(70人÷79人)である」といいます。この値も検査の精度を検証するうえで非常に重要です。 —— 感度、特異度、陽性的中率の3つが大切だというわけですね 検査では、ある数値以上の値が得られたら「陽性」、それ以下の値であれば「陰性」としますが、これを「カットオフ値(cutoff value)」といいます。理想的な検査は、「検査陽性者は全員疾患があり、検査陰性者は全員疾患がある」という状態ですが、実際には偽陽性や偽陰性があります。そのために設定するのがカットオフ値です。カットオフ値は、どの位置に設定するかによって、それぞれの値は大きく変動します。感度を上げるよう(できるだけ疾患者を把握するように)にカットオフ値を下げると、偽陽性が増えて特異度が下がる。特異度を上げるよう(できるだけ健常者を除く)にカットオフ値を上げると、偽陰性者が増えて感度が下がる。といったように感度と特異度にはトレードオフの関係にあります。 —— カットオフ値の位置は、その後の方針に大きく影響しそうですね 何に重きを置いて検査を実施するかによって、感度と特異度のバランスが変わってくるわけです。だいぶ専門的な話になってきましたね。より詳細に踏み込むのは続編に譲るとして、今回はこのくらいにしておきましょうか(笑) —— そうですね(笑)脳がオーバーヒートしてしまうかもしれません では、今回はここまでにしましょう(笑) —— 先生、今回も貴重なお話を有難うございました。 (監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 参考資料 参考文献アウトブレイク調査のススメ(防衛医科大学校 加來浩器教授 著)疫学調査を基にした院内感染症対策(防衛医科大学校 加來浩器教授 著) 参照URLWHO Coronavirus(COVID-19)Dashboard疫学用語の基礎知識「疫学」(一般社団法人日本疫学会) 「delfino施設まるごと抗菌」とは 感染症対策製品「delfino(デルフィーノ)」は、「感染ゼロをめざして」というコンセプトのもと、光触媒(酸化チタン)、抗菌触媒(銀)、三元触媒(プラチナ)などの触媒を組み合わせることで、それぞれの触媒反応が持つ効果を相乗的に発揮させながら、それぞれの弱点を補うという発想の抗ウイルス・抗菌・防臭剤です。専用噴霧器によって、デルフィーノをμ(ミクロン)単位の粒子で噴霧、密閉空間に充満させていくことで、壁面だけでなく、カウンター、チェア、デスク、キャビネットなどのあらゆるものを抗ウイルス・抗菌コーティングして、施設内での感染リスクを軽減します。お問い合わせは以下のリンクから。 お問い合わせ
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防衛医科大 加來教授インタビュー 2021年のCOVID-19を振り返る
2020年に引き続き、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため様々な行動が制限された2021年。しかし、中盤以降はワクチン接種が一気に進み、秋頃には2度のワクチン接種率が70%を超えました。東京都内の12月13日現在の感染者報告数は、32日連続で30人を下回っており、劇的に減っている一方で、海外ではオミクロン株と呼ばれる変異株が猛威を奮っており、予断を許さない状況が続いています。今回のコラムでは、2021年の新型コロナウイルス感染症を振り返り、来る2022年に正しく備えるべく、感染症の権威である防衛医科大学校の加來先生にインタビューさせていただきました(※本インタビューは、2021年12月8日に実施したものです)。 防衛医科大学校 加來先生インタビュー —— 2020年の初期と現在の状況を比較したとき、どのような変化が見て取れるでしょうか世界が新型コロナウイルス感染症の脅威について、様々な症例が検出され、研究が進んできた過程で正しく認識されたことが大きいと言えます。各国で、“経済をある程度犠牲にしてでも封じこめよう”とする対策が講じられました。「ユニバーサル・マスキング」という言葉も生まれましたが、飛沫を防止するべく、咳をしていなくてもマスクを常時着用するようになったのは非常に大きな変化だと言えます。マスクをする習慣のほとんどない欧米においては、なおさら大きな変化だったと思います。 WHO Coronavirus Dasboard 2021 Dec 20 —— 日本国内の11月以降の感染者数が、先進国の中で群を抜いて減っています国産ワクチンがないにも関わらず、短い期間で打つべき人に打ったという点は評価できると思います。一方で、そのワクチンによる重症化抑止によって、無症状者が増えていることが予想されます。現在、東京で見つかっている陽性者はほぼ無症状者。陽性の発覚するタイミングは、主に海外渡航のための事前検査のケースなどです。感染者数が落ち着いている状況下、積極的に検査を受けようとは思わないでしょうから、無症状感染者は一定数存在するのかもしれません。—— 感染者の「報告者数が減った」という表現のほうが正確かもしれませんねそもそも外国と日本には、前提条件として大きな差異があります。日本は、・水道水が清潔・医療制度が充実している・島国であるという特徴があります。特にお水に関しては、「安心・安全なお水が、蛇口をひねれば出てくる」というのは非常に大きい。海外では、飲み水にするためには煮沸が必要ですから、日本の水道水のような水準は、世界でみると決して当たり前ではありません。海外では、水道が感染源になっているかもしれません。 —— 第6波が来るかどうかについて、連日各局で報じられています何をもって第6波というか、という問題がまずあります。日々、感染者数として報告されているかたがたは海外旅行の渡航前にPCR検査を受け発覚した無症状者、と言いましたが、やはりワクチン接種済のかたが市中にたくさんいる可能性は否定できません。 WHO Coronavirus Dasboard(Japan)2021 Dec 20 日本の感染者数のグラフを参照すると、第1波~第4波までの波が上昇と加工のカーブが似たような傾斜になっていることが分かります。しかし第5波は、急速に減少に転じていることが見て取れます。これは、“ワクチン接種によって重症化に至らず、検査を受けていない人”の存在によるものなのかもしれません。—— オミクロン株が注目されていますが、弱毒性なのではないかという話もありますそれについては研究結果を待たなければなりませんが、ウイルスが変異を繰り返していく過程で弱毒化する事例は、数多く報告されています。例えば、ワクチン開発では、「継代培養」という培養を繰り返す手法が用いられますが、培養の過程では、弱毒性で感染力の強い株を残していきます。猛威を奮っているデルタ株もそうですが、新型コロナの遺伝子配列は何度も変わっています。日本国内で日々見つかっているのもデルタ株。オミクロン株はまだほんの数例です。このオミクロン株が弱毒(すなわち重症化しにくい)であるとは、どういう風に考えたらいいでしょうか?私はウイルス学者ではありませんが、重症化とは、肺炎(肺胞の細胞に炎症が起こり、ガス交換が難しくなる)やウイルス血症(血液中にウイルスが入りこんでヒトの免疫細胞からのサイトカインを過剰に出させたり血栓ができたりすること)によって全身状態が悪くなることです。弱毒株が、粘膜上皮細胞にだけ感染し、肺炎やウイルス血症を起こしにくく変異したというのであれば、通常の感冒の原因ウイルスと同じ状態に進化していく過程だと考えられるのです。—— オミクロン株には、現在承認されているワクチンの有効性が低いとも報じられています承認されているワクチンには、ファイザー社製、モデルナ社製、アストラゼネカ社製などがありますが、どれも当初のいわゆる「武漢株」を元に開発されたものです。オミクロン株が未解明であるうちは何とも言えません。オミクロン株が解明され、仮に“弱毒性で重症化しない”と確定した場合、ワクチン接種しなくても、オミクロン株に感染すれば免疫獲得ができるという考え方をするかたが現れるかもしれません。しかし、アルファ株でもデルタ株でも、いくつもの後遺症の報告があります。オミクロン株が弱毒性で重症化しないと分かったとしても、“実は後遺症が重い”という可能性は残されています。その可能性を考慮すると、やはりワクチン接種のほうが合理的だと言えそうです。—— コロナ禍が過去のものになる日が来るのはいつなのでしょうかマスクをせずに公共の場で過ごせるようになるためには、もう2~3年必要なのではないかと考えています。いま日本国内では感染拡大が抑えられていたとしても、海外で猛威を奮っているような状況では、ある程度の行動制限はやむを得ません。ただ、オミクロン株についてもそうですが、過剰に心配を煽るような報道が多いことは懸念しています。第6波への備えとしては、・患者数の急増の予兆をとらえる・保健所機能を強化する・医療資源を確保する・各種検査の精度を管理する・大規模ワクチン接種センターの維持これらを適宜行なっていく必要があると考えています。—— 最後に、読者のかたに向けてメッセージをお願いします新型コロナウイルスの感染拡大状況にかかわらず、時間は刻々と過ぎていきます。これから年末年始、クリスマス、受験シーズンなどイベントがありますが、これまで感染拡大をブロックできてきた行動を、もうしばらく継続してほしいと思っています。マスクの着用や、三密を避ける意識など、個人ができる対策は、変異株対策においても同じです。ご自身のみならず、周囲には、“たった一度の感染で、大事な時期を棒に振るかもしれない人がいる”ということを念頭に置いていただきたいと思います。—— ありがとうございました (監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) delfino施設まるごと抗菌とは 感染症対策製品「delfino(デルフィーノ)」は、「感染ゼロをめざして」というコンセプトのもと、光触媒(酸化チタン)、抗菌触媒(銀)、三元触媒(プラチナ)などの触媒を組み合わせることで、それぞれの触媒反応が持つ効果を相乗的に発揮させながら、それぞれの弱点を補うという発想の抗ウイルス・抗菌・防臭剤です。そのデルフィーノを、専用噴霧器によってμ(ミクロン)単位の粒子で噴霧、密閉空間に充満させていくことで、壁面だけでなく、カウンター、チェア、デスク、キャビネットなどのあらゆるものを抗ウイルス・抗菌コーティングして、施設内での感染リスクを軽減します。お問い合わせは以下のリンクから! お問い合わせ 参照URLWHO Coronavirus Dasboard
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ご存じでしたか?「細菌」と「ウイルス」の違い
全国各自治体で、いよいよ5月から一般に向けたワクチン接種が開始されました。そして、アストラゼネカ製ワクチン、モデルな製ワクチンが承認、24日には国内4例目となるジョンソン・エンド・ジョンソン社からも承認申請がなされました。一気に動き出した感のあるワクチン接種。このことをきっかけに、コロナ禍が少しずつ収束していくことを願うばかりです。 さて、過去に例を見ないくらい「ウイルス」という単語が飛び交っている昨今。読者の皆さんのなかには、「ウイルス」と「ウィルス」、どちらが正しいんだろう?と疑問に思ったことのあるかたはおられませんか?Google検索のヒット数(2021年5月24日現在)を比較してみると、 ウイルス:534,000,000件 ウィルス:134,000,000件 と、大きな差異。とはいえ、5人に1人は「ウィルス」と検索しているわけですね。巷の報道をみていても「ウイルス」と表記している場合が多いようです。じつは、そこには明確な答えはありません。調べてみると、2012年に開催された「第1356回放送用語委員会」開催の記事を見つけました。その中の「カタカナ表記の基本方針」の中に、原音とは異なる慣用が熟しているものは、慣用の形を尊重するとありました。言われてみれば、本来の英語のスペルは「virus」。音を尊重し「ウイルス」と表記するぞ、と決めたのだそうです。それにしても「異なる慣用が熟している」という表現が、何とも言えず日本らしいハイコンテクスト文化の香りを感じますね。本稿の最後に参照URLがありますので、興味のあるかたは覗いてみてください。4ページ目の一覧表に「ウインク」「ウインナー」などと並んで、NHK表記が書かれています。さて、ここからが本題。本稿で今回採り上げるのは、 「細菌」と「ウイルス」の違い について。漠然と「別物なんだろうな」という感触のかたは多いと思いますが、実際その違いは何?と聞かれると、答えに窮するかたも多いのでは。今回は、そんな分かっているようで、実はそうでもない「細菌」「ウイルス」について、理解を深めていきたいと思います。 「細菌」と「ウイルス」の違い さて、「細菌」と「ウイルス」には、いったいどのような違いがあるのでしょうか。その違いを明らかにするためには、以下の3つの観点から見ていくのが良さそうです。 * 大きさの違い * 増え方の違い * 治療・予防策の違い「生物」かどうかという論点も重要ですが、「ウイルスは、生物ではないが微生物ではある」など余計に混乱する恐れがありますので、本稿では割愛させていただいております。 ①「細菌」と「ウイルス」では、大きさが違う 細菌のウイルスの差( image by Ali Zifan ) 「細菌」と「ウイルス」の違いについて、もっとも分かりやすいのは、その大きさ。「細菌」は、インフルエンザやノロウイルスなどの代表的な「ウイルス」との平均値を比較すると、約40倍~100倍の大きさがあります。具体的なウイルス名を例示して比較した表がこちら。 ヒトの肉眼は200μm(マイクロメートル)までしか視界に捉えることはできませんが、「細菌」の大きさは、その1/200~1/40。肉眼ではまるで確認することはできません。「細菌」は、小学校の授業でも取り扱う「光学顕微鏡」でその姿を確認することができます。一方で、表の中で紹介しているウイルスは、肉眼で見える限界値と比較すると、1/9,000~1/2,000という大きさ(一般的には、nm(ナノメートル)という単位が用いられますが、比較しやすいようにμmで表記しています)。観察するためには、大学や研究施設などで使われる「電子顕微鏡」が活躍します。 光学顕微鏡(左)と電子顕微鏡(右)の例 ②「細菌」と「ウイルス」では、増え方が違う ■ 細菌の増え方 細菌は、「遺伝子」と「遺伝子から、増殖に必要な道具(タンパク質=酵素)を作る仕組み」を持っています。そのため、糖などの栄養源と水のある適切な環境下では、自ら細胞分裂を繰り返し、2倍2倍と増殖していきます。細菌の中には、ヒトの体の中に侵入して病気を起こす有害な細菌もいる一方、体内や皮膚の表面にも無数の細菌が存在、良好な環境を保つために重要な働きをするものも。例えば、美肌菌と呼ばれる細菌群。皮膚の表面で、*肌のpH値を弱酸性に保ってくれる*保湿成分を排出してくれる*悪玉菌の繁殖を抑える成分を排出するなど、肌を良好な状態にキープしてくれる役割があります。また、発酵食品などでよく見かける「乳酸菌」や「ビフィズス菌」は、腸内で、消化吸収の補助や免疫刺激など、健康維持や老化防止などに良い影響がある細菌です。 ■ ウイルスの増え方 ウイルスは、栄養源や水があっても、単独で生存するために必要な道具を備えていないので、他の生物の体内に入り込み、細胞から不足している機能を補ってもらう必要があります。体内に侵入したウイルスは、細胞の中に自分のコピーを作らせ、細胞が破裂してたくさんのウイルスが飛び出し、さらに他の細胞に入り込んでいきます。こうしてウイルスは増殖していきます。 ここでの両者の重要な違いは、「細菌」は自ら生存・増殖することができるが、「ウイルス」は単体では生存・増殖できないという点です。 ③細菌とウイルスでは、治療や予防の仕方が違う ■ 細菌による感染症の治療方法は 細菌による感染症には、実に多くの種類があります。感染症の種類によって原因菌も異なり、代表的なものでは、発症した場所が肺であれば肺炎(多くは、肺炎球菌に起因)、膀胱なら膀胱炎(多くは、大腸菌に起因)など。体の不調を感じたら、迷わず医師に相談しましょう。体のどこに問題が起きているのかを特定、そして、原因菌が何なのかを突き止め、治療方針を検討してくれるはずです。もともとの体の状態によっても、どのような菌が悪さをするかが異なってきます。免疫力が低下した状態では、日頃は悪さをしない細菌が問題を引き起こし、感染症を発症することもあり、注意が必要です(「日和見感染」と呼ばれます)。治療には、多くの場合、抗菌薬が処方されます。その種類や量・期間は、感染症の場所と原因菌の組み合わせで変わります。抗菌薬が処方されたときには、正しく服用し、決められた量と回数を決められた日数で飲みきりましょう。症状がよくなったからといって途中でやめてしまうと、感染症が治りきらず、治るまでに余計に時間がかかってしまうこともあります。 ■ ウイルスによる感染症の治療方法は ウイルスは、抗生物質の効き目がありません。そのため、基本的な治療法は、熱を下げる、酸素を投与するなどの対症療法を行いながら、自分自身の免疫力によって、体内のウイルスが駆逐されていくのを待つことになります。インフルエンザウイルスなど、有効な抗ウイルス剤(ウイルスの増殖を抑制する薬)もありますが、決して多くはありません。抗ウイルス薬の開発が困難である理由のひとつは、ウイルスは、タンパク質の殻の中に遺伝子があるだけの非常に単純な構造なので、医薬がターゲットにする「弱点」が少ないこと。また、生物の細胞内で増殖するため、生物に影響を与えず、ウイルスだけを駆逐するハードルが極めて高いと言われています。 ■ それぞれの共通点 細菌とウイルスとで共通していることがあります。それは、予防法として一部に免疫をつけることで予防できる疾患があることです。すなわち「ワクチン」。ワクチンで予防できる疾患は、ぜひ、ワクチンで予防したいものです。今回、新型コロナウイルスのために海外で開発されたワクチンが、輸入されて使用され始めているのはご存知と思いますが、世界中の科学者が叡智を集めてワクチン技術を推し進めています。日本は一歩出遅れましたが、負けじと国産ワクチンが開発されています。日本国内でも、接種者が増える日が待ち遠しいですね。 ~ まめ知識 ~風邪は細菌とウイルスどちらの仕業? 風邪は、上気道(鼻やのど)が微生物に感染することによって起こります。原因微生物の約90%はウイルスが占め、残りの約10%は細菌やマイコプラズマ、クラミジアなどウイルス以外による感染だと言われ、その原因菌の種類はウイルスだけでも200種類以上とも言われます。「風邪に特効薬なし」と言われるのは、どのウイルスが原因で起こったのかを特定することが困難だから。 まとめ 今回のDELMAGAでは、「細菌」と「ウイルス」の違いについてレポートしてきました。おさらいとして、重要なポイント、以下の表にまとめましたので、ご参照ください。 クリックで画像拡大できます 「細菌」も「ウイルス」も、やはり日常生活で感染しないように心掛けることが、とても大切です。最後に、基本的な予防策について。 「細菌」や「ウイルス」の感染から身を守るため予防策 感染症は、原因となる病原体や感染経路によって予防対策が異なります。日頃からできる予防策を徹底しましょう。 常に清潔な環境を保つこと*こまめに手洗いしましょう。手指の清潔さは感染症予防にもっとも効果的です。*こまめな換気や湿度を調整しましょう。ウイルスは低温、乾燥状態を好みます。ウイルスの生息しにくい環境作りを。免疫力を低下させない*栄養バランスの良い食事を摂りましょう。*充分な睡眠をとり、規則正しい生活をしましょう。*適度な運動をしましょう。*ストレスをなるべく溜めないようにしましょう。食中毒の予防*新鮮な食材を選び、常温のものはすぐに食べるか、保管するときはすぐに冷蔵へ。*肉、レバーなどの食品は十分に加熱しましょう。*焼肉など、調理用の箸と食事で使う箸は使い分けましょう。*調理や食事の前、トイレ後、おむつを交換時などには必ず手洗いましょう。 そのほか、予防接種も非常に有効な手段ですし、抗菌・抗ウイルス製品(※)も活躍してくれます。必要に応じて検討してみてください。 ※抗菌製品が、必ずしも抗ウイルス製品であるとは限りません。注意書きや効能をよく確かめるようにしてください。一例として、当社の抗菌・抗ウイルス製品「delfino(デルフィーノ)」は、ターゲットにしたい悪さをする細菌やウイルス、それぞれの検体について、第三者の検査機関でその効果検証を行なっています。 (監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生) 「delfino施設まるごと抗菌」とは 感染症対策製品「delfino(デルフィーノ)」は、「感染ゼロをめざして」というコンセプトのもと、光触媒(酸化チタン)、抗菌触媒(銀)、三元触媒(プラチナ)などの触媒を組み合わせることで、それぞれの触媒反応が持つ効果を相乗的に発揮させながら、それぞれの弱点を補うという発想の抗ウイルス・抗菌・防臭剤です。そのデルフィーノを、専用噴霧器によってμ(ミクロン)単位の粒子で噴霧、密閉空間に充満させていくことで、壁面だけでなく、カウンター、チェア、デスク、キャビネットなどのあらゆるものを抗ウイルス・抗菌コーティングして、施設内での感染リスクを軽減します。お問い合わせは以下のリンクから! お問い合わせ 参照URL 新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(厚生労働省)感染症とは(AMR Clinical Reference Center)外来語の表記・発音について(放送用語委員会/NHK)
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