WHO Coronovirus Disease Dashboard より
新型コロナウイルスが世界中で猛威を奮い続けており、2021年1月27日現在、世界の感染者数は間もなく1億人に達しようとしています。死者は既に213万人を上回っており、この感染症の恐ろしさを物語っています。
日本国内でも、東京を中心として感染者数が急増、医療現場を圧迫しています。最前線におられる医療従事者の皆様や、そのご家族の皆様には感謝してもしきれるものではありません。
この状況を打開するべく、世界中の製薬メーカーや大学の研究機関などでは、急ピッチでワクチン開発が進められています。その成果が徐々に実を結び、昨年末から頻繁にワクチンの開発や認可、使用開始の報道が聞かれます。
今回は、そんなワクチンについて採り上げてみたいと思います。どうぞ最後までお付き合いください。
「ワクチン」とは何なのか?
この「ワクチン」という単語、コロナ禍においては特に耳にすることが多い単語です。
乳幼児が、数か月ごとに推奨される予防接種を行ないますが、それらもワクチンです。ほとんどのかたが接種する身近なものなので、ほとんどのかたがその存在を認識しているワクチン。
でも、ワクチンついて正しく理解されているでしょうか?
ワクチンの概要
ワクチンの効果や副作用についてメディアで議論されることが多いですが、まずはワクチンとは何なのかを知ることから始めましょう。
わたしたちの周りには、細菌やウイルスなど、さまざまな病気を引き起こす原因となる、たくさんの微生物が存在します。このような微生物を「病原体」と呼びます。
病原体が体の中に入ると、私たちは病気になったり、ひどい場合には死に至ることもあります。しかし、ヒトのからだには、一度入ってきた病原体が再び体の中に入ってきても病気にならないようにするしくみがあります。このしくみを「免疫」といいます。
「病原体」:細菌やウイルスなど、さまざまな病気を引き起こす原因となる、たくさんの微生物
「免疫」:一度入ってきた病原体が再び体の中に入ってきても病気にならないようにするしくみ
免疫は、体内に入ってきた病原体を記憶して、病原体と戦う準備をします。
そうすることで、病原体が再び体内に侵入したとしても、病気にかからない、または病気にかかっても重症化しないようになるのです。このしくみを利用したのがワクチンです。
ワクチンは、
・病原体の毒性を弱める
・無毒化する
などして体内に取り込むこと(「接種」と呼びます)によって、病原体に対する免疫を作ります。コントロールされた安全な状態なので、通常の感染(自然感染)のように実際に病気を発症させたりはしません。ワクチンはいわば、自然感染の模擬試験のようなもの。
このことによって、実際に病原体が体内に入ったとしても、既に備わった免疫で退治できるようになるというわけです。
新型コロナウイルス対策のワクチンの接種は「任意」です
医療従事者や基礎疾患を有するかたのあとは、一般の方々が接種できる順番が回ってくる予定です。そのときに、接種できるワクチンの効果やリスクなどを正しく解釈し、検討していきたいものです。
新型コロナウイルスに対する働きかけ
新型コロナウイルスには、スパイクタンパク(S)、エンベロープタンパク(E)、膜糖タンパク(M)、ヌクレオカプシドタンパク(N)という4つのタンパク質が含まれています。
新型コロナウイルスのワクチンとなるプラットフォームは、DNAワクチン、mRNAワクチン、不活化ワクチン、弱毒化生ワクチン、組み換えスパイク蛋白ワクチン、ウイルスベクターワクチンなどが挙げられますが、これらは全て新型コロナウイルスのスパイクタンパクに対して働きかけるワクチンです。
新型コロナウイルスは、多くの異なるタンパク質を使用して細胞を複製および侵入しますが、スパイクタンパクは、受容体に結合するために使用する主要な表面タンパク質。
引用:SARS-CoV-2スパイクタンパクの医学的価値(ベックマン・コールター社)
スパイクタンパクは、ヒト細胞受容体に結合した後、ウイルス膜はヒト細胞膜と融合し、ウイルスのゲノムがヒト細胞に入り、感染を開始できるようになります。
mRNAワクチン(mはメッセンジャーの意味)では、新型コロナウイルスの遺伝子情報をもとに、ウイルスの表面にスパイクタンパクのみの遺伝子(mRNA)を作成します。
そのmRNAを油でできたカプセルに包み、ヒトに接種すると、mRNAの情報通りにヒトの細胞がウイルスのスパイク部分のみを作成、細胞表面に提示します。それをヒトの免疫細胞が認識し、スパイクに対する抗体を作ります。
こうしておくことで、本物のウイルスが侵入したときに、ウイルス表面にあるスパイクを抗体がブロックし、ウイルスがヒト細胞に感染できなくするというわけです。
変異ウイルスに対してワクチンの効果はあるのか
さて、西側諸国でワクチン接種開始が報じられる中、英国で再度感染拡大が急増していることを受け、「変異ウイルス(バリアント)が、ウイルス拡大を一層拡大させている」と日本国内で頻繁に報じられました。しかし実際は、
変異ウイルスの存在と、感染拡大のスピードや範囲には、未だ明確な因果関係は認められていない
のです。本国での報道は可能性に言及し、慎重に言葉を選んだ報道に留まっていますが、日本国内ではその慎重なニュアンスが一切省かれ、あたかも確定した事実であるかのように報じられています。読者の皆様は、くれぐれも情報の精査にご注意ください。
とはいえ、変異ウイルスが増えると、
「せっかく開発したワクチンも、変異したウイルスには無効なのでは?」
そんな疑問の声も聴こえてきそうです。そこで、ここでは「ウイルスの変異」についてまとめていきたいと思います。
新型コロナウイルスのような病原体となるウイルスで怖いのは、第一にその感染力。ヒトからヒトへ、またはヒトから動物へ、感染拡大していきます。
そんなウイルスの真の目的は、「種の保存」のため。自らの子孫を残すという生物としての本能から、拡大を目指しているわけです。
地球の長い歴史のなかで、すべての生物は、環境に自らを適応させていくために、選択や淘汰を繰り返しています。
一部の恐竜が新天地を求め陸から海に出たり、像の鼻やキリンの首が長かったり。これらは、選択・適応の結果。ウイルスのついても例外ではありません。じつは、
ウイルスは、感染して増殖した段階で、変異するもの
なのです。種の保存のため、有利な姿に変化し続けます。
ウイルスは、宿主(=人や動物など、ウイルスに寄生される生物)の体内で増えたり広がったりしやすい種(=適応した種)が生き残り増殖、それが対外に排出されて感染拡大していく、というわけです。
ワクチンを開発する製薬各社は、もちろんこのことは織り込み済。1月20日には、
「米製薬大手ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンについては、英国で見つかった感染力の高い変異種にも予防効果を発揮し得ることが、新たな実験で分かっている。ビオンテックは、南アで見つかった変異種に対するワクチンの効果について、詳細な分析結果を数日中に発表する計画を明らかにしている。アストラゼネカ、米モデルナ、独キュアバックも変異種に対するワクチンの効果を検証している」(ロイターニュース)
と報じられています。「変異ウイルスが見つかった」というメディアの報道だけで一喜一憂せず、落ち着いてひとりひとりにできる感染対策に取り組んでいきたいですね。
ワクチン開発の状況
WHOの12月22日時点のまとめでは、臨床試験段階のCOVID-19ワクチンは61種類あり、前臨床の段階にあるものはさらに172種類あるとしています。
先行しているのは、米ファイザー&独ビオンテック製、英オックスフォード大学&アストラゼネカ製、そして米モデルナ製の3種類で、西側諸国などで承認され、既に接種が開始されています。いずれのワクチンも2度の接種が必要、2度目完了まで免疫が完成しません。
日本国内でも、アメリカのファイザー社が昨年12月に承認申請を行なっています。この承認にかかる時間を短くするため、審査を大きく省略した形式の特例承認という承認方法の適用を目指しています。政府は既に3億回分以上の契約を締結しており、承認され次第、2月下旬より、
1.医療従事者
2.高齢者(1957年以前に生まれた人)
3.高齢者以外で基礎疾患を有する人や高齢者施設の従事者
4.その以外
という順序で、「原則、居住地の市町村」で無料接種が開始される予定。とはいえ、ワクチン接種にあたっては、人員の確保や環境の整備に加えて、物流の問題も大きな課題として残ります。
最も先行しているファイザー社製のワクチン(2021年内に約1億4400万回分の供給を受ける契約済)は、零下75度で保管する必要があります。陸路、空路など、その温度を保ちつつ輸送し、目的地で保管する物流機能の早急な整備が求められています。
大事な行動・意識とは
以上、今回はワクチンについてお伝えしました。各社の製品の具体的な情報や、国内製薬各社の開発状況などは続報をお待ちください。
もう少しの間、ひとりひとりが当事者意識をもってこの難局に立ち向かっていきましょう。基本的な感染対策を怠らず、そして不要不急の外出、密になる状況を作らないようにしていきましょう。
(監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生)
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参照URL
SARS-CoV-2スパイクタンパクの医学的価値(ベックマン・コールター株式会社)
新型コロナのワクチン開発・摂取状況について、医師が解説します。(医療法人社団エムズ)