新型コロナとインフルエンザの同時流行に備える

 

 

 

 

11月も下旬に差し掛かり、すっかり気温も下がってきました。もう冬支度は済まされましたか。

さて、日本国内では、スポーツや音楽コンサートなど、各種の大型イベントの規制緩和や、入出国における水際対策が緩和されました。その影響か、11月に入って新型コロナウイルスの感染者数は増加傾向に。札幌市では過去最多を更新したという情報もあり、「とうとう第8波の到来か」という声も聞こえてきています。

さらに、マスクの着用や外出自粛など、新型コロナ対策によって抑えられていたインフルエンザが、今シーズンは急増するのではないかとの懸念も。インフルエンザと新型コロナ、その感染力も強く重症化リスクのある2つの感染症は脅威ですが、さらに、最大のリスクとして「同時感染」の可能性も…。

経済活動が活発になり始め、少しずつ上向く兆しが見え始めているなか、少しでも余計な不安を取り除いておきたいものです。そこで、今回のコラムでは、その「新型コロナとインフルエンザの同時流行」について、感染症の権威である防衛医科大学校の加來教授にお聴きしながら整理していきたいと思います。

ご自身と、周りの方々を守るためには、まずは正しい情報収集が肝。ぜひご一読ください。


コロナ禍以降のインフルエンザの流行状況は

 

新型コロナウイルスの全世界的な感染爆発によって、すっかり影を潜めていた感のあるインフルエンザ。実際の国内の感染者数はどうだったのでしょうか。厚生労働省が2020年、2021年の患者数を公表しています。

 

 

2020年、2021年ともインフルエンザ患者報告数は前年を大きく下回っていることが分かります。やはり、「新型コロナへの対策が、インフルエンザ予防にも効力を発揮した」と考えて問題なさそうです。その新型コロナへの対策には、大きく分けて2つの方法がありました。

 

個人が意識的に行なう対策
→マスクの着用や手洗いの徹底、三密の回避など

国や地方自治体などからの要請によって行なう対策
→国や地方自治体が発令する緊急事態宣言や、国際間の往来の規制など

 

後者については、新型コロナウイルスの初期から昨年にかけては4回の緊急事態宣言が発令、また、全期間を通して不要不急の外出自粛が要請されました(※自治体による差異があります)。

さらに、海外渡航には関しては、より厳しい制限がありました。直近2年間の入出国者数を、出入国在留管理庁が公表しています。

 

 

直近の2年間と今シーズンでは、「国や地方自治体などからの要請によって行なう対策」に関して大きな差異があります。つまり、一人ひとりの意識・モラルに基づいた感染予防策が今シーズンは大切だということです。

 

防衛医科大学校 加來教授に聴く

 

 

2022年を健康に乗り切っていただくための新型コロナとインフルエンザに関する知識・備えなどについて、防衛医科大学校の加來教授へのインタビューさせていただきました。

今回のインタビューに先立ち、新型コロナウイルスとインフルエンザに関する質問・不明点をSNSなどで募集したところ、集まった質問・不明点のうち、票の多かったものがこちらです。

 

・新型コロナとインフルエンザ、どちらをより警戒するべきなのか
・新型コロナとインフルエンザのワクチン、同時感染はあり得るかどうか
・新型コロナはインフルエンザに有効なのかどうか
・インフルエンザワクチンに副反応はないのかどうか
・新型コロナのワクチンの同時接種は可能なのかどうか
・新型コロナとインフルエンザ、両方の予防策はあるのかどうか

 

これらの6つの質問・不明点について、加來先生にお聴きします。


加來先生インタビュー

 

 

 

—— はじめに、まず新型コロナとインフルエンザ、より警戒するべきなのはどちらでしょうか

もう皆さんもお気づきだと思いますが、2つの感染症とも様々なケースがあるので断言は難しいですが、忘れていけないのは両者ともに局所の感染症ではなくて、全身感染症であるということです。したがって、基礎疾患をお持ちの方が重症化するリスクは両者ともに高いのです。新型コロナウイルス感染症は、これからも変異を繰り返していくでしょうから、症状も後遺症も大きく変わってくることが予測されます。

しかしながら、一番気になるのは、やはり致死率です。新型コロナ対策を検討する専門家グループの調査報告では、「オミクロン株の感染者に占める死亡者の割合(致死率)は、今年1月以降の暫定値で約0.13%と、複数の方法によって推計した季節性インフルエンザの致死率0.006~0.09%を大きく上回っている」という結果でした。

 

—— 新型コロナとインフルエンザ、これらの感染症に同時に感染することはあり得るのでしょうか

同時にかかることがあります。欧州では既に同時感染の事例が報告されています。最近「新型コロナの症状は軽いから大丈夫」と高をくくって、予防しない人が増えているようですが、同時感染のリスクは警戒するべきです。

先にどちらに罹患しても、基礎疾患を有するに人にとっては、持病の悪化や体力の消耗に繋がりますので、同時感染すると重症化のリスクが高まるし、その間は二つのウイルスを周辺に排出していることになります。

 

—— 新型コロナのワクチンを既に3回打っています。それでもインフルエンザには感染することはありますか

それぞれまったく別のウイルスによる感染症なので、新型コロナワクチンはインフルエンザには効果はありません。

そもそも新型コロナワクチンもインフルエンザワクチンも、感染予防効果というよりは発症時の症状軽減効果(重症化予防)が期待されています。心配な方はイルエンザワクチン接種をお奨めします。

 

——新型コロナワクチンの接種時、副反応で数日間寝込みました。それからワクチン接種に対して恐怖感がありますが、インフルエンザワクチンにも副反応があるのでしょうか

インフルエンザワクチンは、一般に副反応が少ないとされています。10~20%の割合で、接種局所の赤み、腫れ、痛みが起こりますが、通常2~3日で消失します。過去に重い副反応の報告事例がありますが、それらはワクチン接種との因果関係が明らかになっていません。

逆に接種してはならないのは、過去にインフルエンザワクチン接種により重症なアレルギー症状 (アナフィラキシー反応) を起こしたことがある人のみです。

 

—— 新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種しても大丈夫ですか

新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは、同時接種が可能です。新型コロナワクチンと他のワクチンの接種間隔では、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチン以外のワクチンでは2週間が必要ですが、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンについてはその制限がありません

 

—— 新型コロナとインフルエンザの両方の予防策はありますか?

現在、大型イベントの開催や海外渡航など、新型コロナに対する様々な規制が緩和されています。そのため、新型コロナの感染拡大と、新型コロナの予防対策によって防止できていたインフルエンザも感染拡大の可能性があります。

 

 


WHO_COVID-19_Dashboard(2022/11/17)

 

 

そうなった場合、新型コロナの第6波で経験したように医療機関に大勢の人が押し寄せたり、医療従事者が感染したりと、スムーズに診断が受けられない状況(医療ひっぱくの状態)が続く可能性があります。そのためにはやはり、自己防衛が重要だと考えています。

新型コロナとインフルエンザは、別のウイルスですが、感染対策は同様です。

 

  •  ・三密を避ける
     ・マスクの着用と咳エチケット
     ・口腔衛生(うがいなど)
     ・こまめな手洗い

 

これらの基本的な予防策を徹底することが大切です。スポーツや音楽コンサートなどの大型イベントに参加する際には、運営側から発信される感染症対策をしっかり守り、参加者のお互いが気持ちよく楽しむことが重要だと思います。

インフルエンザワクチン接種は、ご自身を守るという目的の他に、ご家族・ご友人への感染源とならないという目的があります。とくに身近にお年寄りや小さなお子様、基礎疾患をお持ちの方がおられる場合にはぜひ接種を検討してみてください。

 

—— ありがとうございました

 

さいごに

 

 

今回は、新型コロナとインフルエンザの同時流行について、加來先生にインタビューさせていただきました。

新型コロナとインフルエンザは日常生活に支障をきたす脅威ではありますが、日頃から基本的な感染症対策を行なっていれば、同時に抑止することができそうです。繰り返しになりますが、基本的な対策は、以下の4つ。


 ・三密を避ける
 ・マスクの着用と咳エチケット
 ・口腔衛生(うがいなど)
 ・こまめな手洗い


ご自身と、周りの皆さんをまもるため、意識してみてください。また、個人の意識・モラルに担保しない事業者の行なう感染症対策には、当社の主力サービスであるこちらを。

 

delfino施設まるごと抗菌

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

(監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生)

 

参考URL

 

WHO Coronavirus (COVID-19) Dashboard

令和2年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について

令和3年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について

 

 

 

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