新型コロナウイルスの被害に遭われている皆様には、心よりお見舞い申し上げます。不自由な生活を余儀なくされている皆様が、一日も早く平常の生活に戻ることができますようお祈り申し上げます。
世界中を震撼させている「新型コロナウイルス」。新型コロナウイルスは、ヒトからヒトへと感染し、中国湖北省武漢市から世界各国へと感染が拡大。
2月14日時点の感染者数は全世界で6万人を超え、死者数も1,300人以上に達しています。発熱や咳、肺炎といった呼吸器系の症状を呈し、重症化すれば死に至ることも。我が国でも、とうとう死者が出てしまいました。
罹患された方々や、感染の疑いで隔離されている方々は、ウイルスの脅威に不安な気持ちで日々過ごされていることと思います。世界各国では、差別的対応を受けたアジア人の被害も報告され、日本人としても他人事とは思えません。感染拡大を防ぐための措置と人権侵害を混同しないよう、一人ひとりが自覚をもって行動する必要がありそうです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
今回は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」についてお伝えしていきます。新興感染症という人類にとって初めての感染症なので、現時点で判明している事実をもとに整理していきます。読者の皆さんご自身やご家族の身を守るためにも、ご活用いただければ幸いです。
世界保健機関(WHO)は11日、中国を中心に流行している新型コロナウイルスによる病気の正式名称を決定、発表しました。名称は、
「COVID-19」(読み方:コービッド ナインティーン)
これは「コロナ(Corona)」、「ウイルス(Virus)」、「病気(Disease)」というそれぞれの単語、そして、WHOに病気が報告された「2019年」の組み合わせからできた造語。そして、その病原体のウイルスは、SARS-CoV2と命名されました。
中国と日本の感染者数の推移
まずは、中国と日本の感染者数について、これまでの推移を厚生労働省の報道発表資料をもとに、時系列順にまとめてみました。以下の表1をご参照ください。
1月12日時点で、中国での感染者数は41人で全てが湖北省武漢市からでした。しかも当初問題視されていた海鮮市場を閉鎖した1月1日以降は新規患者は出ていないとされていました。
しかし、疫学調査とウイルス検査の結果からヒトーヒト感染が進んでいることがあきらかになり、やがて中国国民の大移動である春節を迎えます。中国政府は武漢市の交通を遮断するという大胆な手段をとりますが、中国全土への拡散を止めることはできませんでした。
2月14日時点には、63,851人の患者が報告され、1日で約2万人ほど増えましたが、湖北省からの報告要領が変更となり、確定例と疑似症例を合算したものとなったからです。
2002年~2003年に流行したSARSの感染者数は8,098人、2012年から現在も流行中のMERSの感染者数は2,494人と発表されています。このことからも、新型コロナウイルスの影響力の大きさが分かりますね…。
影響力は、患者数と重症度のかけ算で評価します。重症度の分かりやすい指標に、 患者数に占める死亡者数の割合 である「症例致死率」があります。
湖北省での症例致死率は約2.8%。一方で、湖北省以外では約1.2%。地域による重症度の違いは、院内感染や医療崩壊によることを意味するのかもしれません。今後も注視していく必要があります。
日本国内の感染者の状況
日本国内の感染者数は、クルーズ船を除き33名。(2月14日時点)
うち、症状を発症した方は、30名と報告されています。厚生労働省の報道発表資料では、罹患者それぞれの状況を日次で発表しています。以下のリンクからご参照ください。
国内での状況は、日々変わっています。
2月10日時点では、22名の感染者のうち、武漢市のある湖北省に滞在歴のある方は18名。滞在歴のない4名のかたも、滞在歴のある方と濃厚接触していたことがわかっています。このことから、国内での感染例は、武漢市と直接的に関わった経路での発生と考えられていました。
しかし、2月14日の報道によると、武漢市の関わりが特定できない感染者が、和歌山、神奈川、東京、千葉と、4名のかたが同時多発的に発生しています。
このように日本国内では、中国の居住歴や渡航歴を有するヒトからの発病に加え、リンクが追えない患者の散発例が報告されるようになってきました。これも帰国者の健康監視や患者との濃厚接触者に対する疫学調査を通じて、徐々に臨床経過がわかるようになったり、限定的だった検査が全国の自治体で行えることぎできるようになったからです。しかし2月15日には院内感染の発生が確認されてしまいました。今後は、いっそうの感染制御をすすめていく必要があります。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」内の状況
運営会社Webサイトより引用
横浜港に寄港したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」内では、2月14日時点の検査結果で、218人の陽性反応が確認されています。該当する方々は、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、静岡県内の感染症病棟を有する医療機関に順次搬送されていますが、乗客・乗員の方々合わせて2,600人余りが船内待機を余儀なくされています。
乗客・乗員の皆さまが、大変なストレスを抱えて生活されていることは想像に難くありません。船内での感染拡大が収束し、皆さまが無事に普段の生活に戻られることを心より願っております。
新型コロナウイルスについて現時点でわかっていること
コロナウイルスには、これまで6種類の型が存在することがわかっていました。うち、4種類はかぜの原因ウイルスとして知られ、残りの2種類はSARSとMERSの原因ウイルスとして知られています。新型コロナウイルスは、今回新たに発見された第7のウイルスです。国立感染症研究所や政府の発表を元に、7種類のコロナウイルスについて現時点でわかっていることをまとめました。
新型コロナウイルス感染症の特徴
潜伏期間は1~12.5日とされ、濃厚接触者は14日間の健康観察が推奨されています。国内の感染者の年齢は20~60代と幅がありますが、SARSやMERSと同様、現在のところ子どもの発病の報告は少ないです。
また、重症者の多くが高齢者や基礎疾患を持つ方という報告があり、厚生労働省では高齢者や基礎疾患のある方々に対して、より一層の注意を呼びかけています。
表にもありますが、新型コロナウイルスの感染経路は、以下の2種類であることがわかっています。
新型コロナウイルスの感染経路
■飛沫感染…感染者の咳やくしゃみと共に排出されたウイルスを口や鼻から吸い込むことで感染
■接触感染…感染者が咳やくしゃみを手で押さえることで、感染者の手にウイルスが付着。その手で触れた物を介して別の人の手にウイルスが付着、その手で目、口、鼻を触ることで粘膜から感染
新型コロナウイルスを予防するために
新型コロナウイルスに特効薬はありませんが、予防策はあります。この章では、新型コロナウイルスの予防策について詳しくお伝えしていきます。
新型コロナウイルスは「エンベロープ」と呼ばれる脂質で構成され、エンベロープを持つウイルスは界面活性剤やアルコールなどの消毒薬により不活性化されます。そのため、新型コロナウイルスの接触感染予防には、「手洗い」または「手指消毒」が有効です。
食事前は特に、よく手を洗うよう心がけましょう。また、ウイルスは目、鼻、口から体内に侵入するため、むやみやたらに手で触らないよう意識することも大切です。首相官邸、厚生労働省からリリースされている資料に、正しい手洗いの方法が書かれていますので、ご紹介します。
また、咳症状があるときなどは、周囲にうつさない配慮が重要。マスクの着用や咳エチケットを徹底するよう心がけましょう。
※現在、マスクの品薄状態が続いており、一部の心無いかたによる買い占め、転売が拍車をかけている事象が報告されています。感染予防には、一人ひとりの良識や思いやりも大切です。
一人ひとりが当事者意識を!
感染症予防の基本は、まず以下のことを心掛けましょう。
・咳症状や発熱などの症状がある人に近づかない
・人混みの多い場所になるべく行かないようにする
・手指を清潔に保つ
とはいえ、公共交通機関での通勤・通学など、人混みや密室空間、換気が十分ではない空間を完全に避けるのは困難です。そんなときは、マスクの着用は一定の効果が期待できると言えるでしょう。
そして、目的地に到着したら、すぐ手洗いするようにしましょう。咳症状が出ている人は、すぐにマスクを着用、早めに病院での診療を受けるなど、周りへの配慮を忘れないようにしてください。双方からの気遣いが、いちばん効果的です。
以上、今月は新型コロナウイルスについてレポートさせていただきました。
感染拡大を防止するのは、一人ひとりの当事者意識から。
被害に遭われている方々をはじめ、不自由な生活を余儀なくされている方々が、一日でも早くもとの生活に戻られることを、心より願っております。
(監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生)
参照URL
新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月7日版)
日本経済新聞「中国・湖北省滞在の外国人、入国拒否 首相が表明」
NHK「新型コロナウイルス 感染したら出る症状は その治療は」
YAHOOニュース「症状、予防、経過と治療… 新型コロナウイルス感染症とは? 現時点で分かっていること」
時事ドットコム「【解説】新型コロナウイルスの死者について分かっていること」
厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」