メリークリスマス! ♬
今日は、待ちに待ったクリスマスイヴ。イルミネーションで華やぐ街。幸せそうに笑顔で肩を寄せ合う恋人たち。いっとき寒さも忘れ、世界中がワクワクする一大イベントです。
ちなみに…
「クリスマスイヴは、クリスマスの前日のこと」だと思っているかたは多いのでは?これは、じつは間違い。教会暦では、「『日没をもって日付の変わり目としている』ため24日の日没から、クリスマスの当日になる」というわけ。ご存じなかったかた、是非周りのかたにドヤ顔で教えて差し上げてください!
さて、ここからは真面目なお話です。
乾燥が気になるこの季節…。大活躍するのが「加湿器」や「お風呂」。加湿器は、感染症の予防対策として広く知られ、また、お風呂は血行を促進、免疫力アップの効果が期待できます。
レジオネラ菌
です。レジオネラ菌は、感染すると死に至る可能性もあるため大変危険です。2019年に入ってからも死亡例が発生しています。
レジオネラ菌の感染者は、1999年には56例だったのに対し、2018年には2000例を超え、2019年も47週時点で2,148例と増加の一途をたどっています。
レジオネラ菌の恐ろしい特徴
レジオネラ菌は、自然界のどこにでも存在する細菌です。土壌中や河川、湖や沼など、身の回りのいたる所に生息しています。とはいえ、自然界に生息しているレジオネラ菌は、あまり大きな影響はありません。なぜなら、発病に至るほどのレジオネラ菌が繁殖するためには以下の条件がそろう必要があり、その条件がそろいにくい自然環境下では、そもそもの生息数が少ないと考えられているためです。
レジオネラ菌の繁殖条件
- ・水
・寄生するための原生動物「アメーバ」の存在
・アメーバの餌(人の垢、汚れ、有機物など)
・20~50℃の温度(繁殖に最適な温度は36℃前後)
さらに、レジオネラ菌は他の細菌に比べて分裂する速度が極めて遅いことから、繁殖するためにはある程度の時間も必要とされています。しかし、それらの条件が整ってしまう環境が存在するのです。それは、
人工的な環境下で循環している水の中
です。そうした環境下では、以下の過程でレジオネラ菌が繁殖していきます。
レジオネラ菌が繁殖し、発病性を持つ過程
①「レジオネラ菌」が、人工的な環境下で循環している水の中に混入
② 水温20℃以上の水に生息する極めて小さな原生動物「アメーバ」が「レジオネラ菌」を食べる
③「アメーバ」の中で、アミノ酸を餌に「レジオネラ菌」が増殖
④「アメーバ」の中で増殖した「レジオネラ菌」が、アメーバを食い殺し、水中に放出される
通常、細菌類はアメーバなど原生動物の餌となり、捕食された後は消化され死滅します。レジオネラ菌が恐ろしいのは、アメーバ内で増殖し、最終的にはアメーバを食い殺してしまう点です。
さらに、レジオネラ菌は塩素濃度0.5ppmの消毒薬で死滅しますが(水道水中の塩素濃度は0.1ppm以上、1ppm以下)、一度アメーバに捕食されたレジオネラ菌には消毒薬が届きにくいことも分かっています。自分を捕食したアメーバを逆に食い殺して生存…まさにホラーですね。しかも、この性質は、人体への病原性にも大きく関係しているのです。
通常、人体に侵入した細菌の多くは、体内の免疫細胞によって退治されますが、レジオネラ菌は免疫細胞のマクロファージに捕食された後、その内部で増殖、マクロファージを食い殺す能力を得します。その性質があるからこそ、レジオネラ菌は免疫細胞の監視を逃れ、体の奥深くにある「肺胞」にまで到達することができるのです。
とはいえ、健康な成人が発病するのは稀です。レジオネラ菌に感染しやすいのは、
乳幼児、高齢者、病にかかっている人
といった抵抗力が弱い方が中心。ただし、健康な成人であっても、
喫煙者、飲酒量の多い人、過労などで免疫力が低下している人
といった方は、感染する場合があるので注意が必要です。ちなみに、レジオネラ菌が人から人へ感染することはありません。
レジオネラ菌が原因の感染症
レジオネラ菌は主に2つの感染症を引き起こします。それは、重症型のレジオネラ肺炎と軽症型のポンティアック熱です。前者では、菌を吸い込むわけですから、肺症状が出るのは当然として、肺外症状も出てくるのが特徴です(クリックで画像拡大します)。
レジオネラ肺炎を発症した場合は、適切な治療が行われないと急速に症状が進行し、重症化して死に至るケースもあります。治療には抗菌薬の投与が行われ、有効な抗菌薬の投与が行われない場合は、7日以内で死亡するといわれています。
一方で、ポンティアック熱の症状は軽く、抗菌薬なしでも数日で治癒します。
レジオネラ菌の感染予防策は
レジオネラ菌の感染を防ぐためには、レジオネラ菌が増殖しにくい環境を作ることが大切。レジオネラ菌は、人の垢・汚れ・有機物などがある20~50℃の水の中で増殖しやすくなります。
レジオネラ菌が増殖しているかどうかを見極める判断基準は「ぬめり」。「ぬめり」は生体膜と呼ばれ、繁殖した細菌が分泌する物質により形成されています。 「ぬめり」の中では、細菌やアメーバなどが生息し、ある種の生態系が築かれているのだそうです。
ご家庭では、以下の機器の衛生管理に注意が必要です。
「超音波式」加湿器
加湿器には、一般的に「超音波式」「スチーム式」「気化式」「ハイブリッド式」の4種類があります。その中でもレジオネラ菌が発生しやすいのは「超音波式」です。超音波式以外の加湿器では、レジオネラ菌が死滅する60℃以上の熱が加えられる仕組みとなっているため、菌がそのまま放出される可能性は少ないと言われています。
しかし、超音波式の加湿器は、超音波による細かい振動でしぶきを放出するため、レジオネラ菌もそのまま放出されてしまいます。そのため、まずはご家庭の加湿器がどの方式によるものか確認し、今後購入を検討する場合は超音波式を避ける方がいいでしょう。もし、超音波式加湿器を利用する場合は、毎日水を入れ替えて、容器を洗浄することが大切です。
追い炊き機能付きのお風呂
浴槽には大きく分けて「循環型」と「入れ替え型」の2種類があります。レジオネラ菌が繁殖しやすいのは「循環型」の浴槽、いわゆる「追い炊き機能付きのお風呂」です。そもそも浴槽には、レジオネラ菌が寄生するアメーバの餌(垢や洗剤などの有機物)が提供されやすい環境が整っています。さらに、浴槽の水をポンプなどで循環させながら加温・保温を行う循環型では、レジオネラ菌が繁殖しやすい温度も維持されます。
そのため、浴槽の水は入浴後に毎日完全に排出し、翌日には新しい水を使用することが大切です。また、浴槽の吸い込み口は毎日清掃を行い、吸い込み口の先につながるポンプやろ過機は週1回以上、逆洗浄や消毒等を行い、ぬめりを取り除くことが望ましいとされています。
これらの衛生管理が徹底されていれば、家庭内でレジオネラ菌に感染する可能性は低いと言えます。レジオネラ菌の感染例は、多くの人が利用する大衆浴場などでも多く発生していますが、まずはご自身の目が行き届く家庭内での衛生管理を徹底してみてくださいね!
(監修:防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症学・制御研究部門 加來浩器先生)
参照URL
FRIDAYDIGITAL「それでも使う?「超音波式加湿器」のヤバすぎる微生物汚染の実態」
栄研化学株式会社HP「レジオネラ(Legionella)属細菌の系統進化と生態」
大阪市立環境科学研究所「アメーバの生息環境とレジオネラ感染症」